何度時計に視線を向けたことだろう・・・・


時刻が22時30分を過ぎたところ、キョーコは深いため息をつきながらテーブルに置いてある携帯電話に視線を向けた。


・・私何しているんだろう


すでに恒例になってしまった敦賀さんからの電話を待ちわびている自分の行動と、かかってこない電話に苛立ちながら床の上で膝をかかえ一点を見つめていた。
ヒンヤリした床の冷たさが、まるで自分の心を映し出しているようで孤独な気分を一層憂鬱なものにしていた。


どれくらいそうしていたのか、テーブルの上の携帯電話に視線を向けた後、時計に視線を向けてからキョーコはシャワーを浴びに行くために支度をはじめた。
すでに時刻は23時を過ぎている。


・・・・気にしているからこんなに時計を見てしまうんだわ

認めたくない恋心、気づきたくない想い
すでに敦賀さんは私への執着が薄れてしまったのかもしれない
あの優しい瞳が私を映さなくなったとき、今よりももっと辛いのだろうか・・


そう思うとキョーコは大きなため息をついた。


シャワーの水滴が身体を伝うと、抱きしめられているような錯覚にキョーコは眉間に皺を寄せ、自分自身を抱きしめた。


もう、すでに後戻りできない程彼に心を奪われていると確信して両ひざに手をつき、流れ続ける水の道をただじっと見つめていた。


「はぁー」


部屋に戻るのが怖い

かかってこない電話を見つめため息をつく自分を想像するとそれだけで一層寂しさが募る。

ただ時間だけが過ぎていくことに不安を感じ、またため息をつくのだろうか
いっそ、自分から連絡をした方が気が晴れるのかも知れない。


待つことに耐えられず、キョーコはそんなことを決意してシャワーを止めた。