「・・・以上で本日の会議は終了します・・。」


待ちわびた言葉を聞いた蓮は、めずらしく誰よりも早く会議室を後にした。
その行動に誰もが驚いて互いの顔を見合わせる。
社だけが苦笑してのんびりと腕時計に視線を動かしてため息をついていたが、誰もその行動には気が付かなかった。



蓮は、走り出さない自分が奇跡だと言わんばかりの焦りようで、ロッカールームへ急いだ。もどかしい手つきで鍵をあけ、会議室に持ち込むことが出来なかった電子機器を手に取ると、急いで着信履歴をチェックする。
はやる気持ちを押さえながら慣れた手つきでパスワードを解除した。


着信は全部で5件。
スクロールして履歴を確認すると、仕事関係が3件と1件は女性からだった。
諦めたように最後の履歴に到達すると、蓮は何度もその名前を見直した。


「え・・えっ・・・・」
氷の美貌と評された蓮が艶やかに微笑む。
普段見せることのない破顔した顔で蓮はその着信履歴の名前をなでると再び微笑んだ。


「連絡をくれたのは・・1時間も前か・・」
腕時計に視線を向け、次に表示されている『最上キョーコ』の名前をみて蓮は連絡するべきか考えた。しかし答えを出す前にすでに指を動いていた。


もしかしたら大切な用事なのかもしれない・・


そんなことはないと知っていながら、自分に言い訳をするように蓮は嬉しそうに携帯電話を耳にあてた。