キョーコと連絡が取れなくなって3日になる。夜の電話はもちろんのこと日中会社で会うこともなかった。社長である自分が何度も営業部に足を踏み入れることもできず、悶々とする気持ちを何とか切り替えて仕事に没頭していた。


はぁー・・・・・


今日何度目のため息だろうか・・
まさかこれほどまでに彼女に夢中になっているとは気が付かず、あまりにひどい状況に自分でもどうすることもできなかった。
感情に左右される生活なんて今までしたことがない。
もちろんその対処方法さえもまったく思いつかなかった。


社長室の椅子に座りながら窓の外を眺め気分を紛らわせても一向に紛れることなく、むしろキョーコに会いたくて仕方ない想いに駆られた。


・・俺はいったいどうしたと言うんだろうか・・
いったい彼女のどこに引かれたのだろうか・・


ノック音が部屋に響くのも聞こえないほど考え事をしていた蓮だったが名前を呼ばれびっくりして扉に視線を向けた。


「蓮・・入るぞ?」


「あ、・・すみません社さん・・どうぞ?」
急に声を掛けられて驚いた蓮とは対照的に、社は苦笑していた。


「・・どうかしました・・か?」


「おまえ・・大丈夫か?・・この3日間くらいボーっとしすぎだぞ?」
ニヤニヤしながら社が近づいてくると蓮は恥ずかしそうに前髪をかき上げた。


「すみません。自覚はしているんですが・・どうにもならなくて・・」


「ま、俺は今のお前も嫌いじゃないけど・・それにしても今までのお前からは考えられないほどの変貌ぶりだ!社員も最近のお前の表情が柔らかくなったとか、人間味がでてきたとか・・ま、そんな話が聞こえてくる・・。で、本題だが・・」
そういって社は周りをキョロキョロして誰も近くにいないことを知っていながらもそんな行動をとって蓮に近づいた。


「あのな・・キョーコちゃんだけど・・風邪で休んでるんだってさ・・」


社が内緒話のようにそう言うと、蓮は瞳を見開き驚いた顔をしたまま社を見つめかえした。


「だから連絡が取れないんだよ・・よかったな原因がわかって」
酷く安心した顔をした蓮の表情も長くは続かず、すぐに心配そうな顔をしてため息をついた。


「風邪・・ですか・・・・」


かすれたようなその声が よかった に聞こえたのは気のせいだったのだろうか。
社は微笑ましく蓮の様子を見てニヤリと笑った。