「・・みさん・・もがみさん・・・・今までありがとう。君と過ごしたこの数週間は本当に楽しかったよ・・。」
そう言って、蓮が艶やかな笑みを浮かべた。
彼の左腕にはまぶしいほど美しい女性がそのきれいな細い腕をからめ、彼を見上げて微笑んでいた。
まるで一枚の絵を見ているようにしっくりと落ち着く2人の陰


・・・・そうだった・・
彼の横には誰もが振り向くような綺麗な女性が似合う、私のような色気もないような女に本気になるわけがない・・


心にズキリと痛みが走ると、キョーコは現実に引き戻されゆっくりと目を覚まし小さな溜息をついた。

はぁ~


「・・勝手に期待していたみたい・・電話がないことがいい証拠・・・・」
もう飽きられたに違いない・・


蓮とそれなりに連絡を取るようになってから3週間以上の日数が過ぎていた。今までの彼女たちとの付き合いをみても、そろそろ次の女性の噂が見え隠れする時期・・


わかっていたこととはいえ、実際に自分の身におきて見ると、深い傷ができたようにズキズキと心の奥が痛んだ。


重たい頭を動かし寝返りを打つと、その視線の先にある携帯電話に着信を知らせるライトがついていてキョーコは知らずに微笑んでいた。


「・・・・誰・・だろう?」


頭では冷静になれといいながら、高鳴る気持ちは抑えることができずキョーコは腕を伸ばして携帯電話を開いた。


「・・え?・・・・」
思いがけない表示名の着信履歴にキョーコは驚いて目を見開いた。


「・・・・ショー・・タロー・・?」
着信履歴によると数分前だった。


「・・あ、この音で目が覚めたの・・かしら・・?」
キョーコは仕方なく、ショータローに連絡をするためにボタンを押すと、待つことなく相手が応答してそのことにキョーコはひどく驚いた。


「てめぇ・・おせぇ~よ!!」
開口一番憎たらしい声にキョーコはそのまま電話を切りそうになりながらも、声に元気がないことに気が付いてその衝動をなんとか押さえこんだ。


「・・まったく・・で・・要件はなんなのよ・・ショータロー?」


「ぁあ?・・用事があるから今から出てこい!!」
相変わらず自分中心の物言いにキョーコは大きなため息をついて答えた。


「無理よ・・ちょっと風邪ひいたみたいで動けそうにないから・・要件・・電話でいいでしょ?なんなのよ?」
ただでさえ熱っぽいからだが、怒りでさらに熱くなるのを感じてキョーコはイライラした。


「・・・・ったく・・キョーコのくせに・・」


「嫌なら、他をあたってくれる?あんたが一声かければ喜んでホイホイついてくる女が山のようにいるんでしょ?いつも言ってるじゃない?」


「・・ったく悪かったよ・・・・・・」
そういったままショータローはしばらく沈黙を作り咳払いをした後に不自然なほどやさしい声で話し始めた。


「キョーコ・・俺と付き合ってくれ・・」


言われた意味が分からず、キョーコは持っていた携帯電話をじっと見つめたあと急に納得したように微笑んで、鼻で笑うように答えた。


「えぇ・・いいわよ?」