瞳を開いているはずなのに、暗闇に一人取り残されたように何も見えなかった。
不思議と怖さは感じられなかった。
ただ、のどがひどくカラカラで、声を出したいのにそれを妨げていた。
「・・・・ず・・しい」
水がほしいと 言ったはずなのに言葉にならない。
かすかに感じた明かりに大きな影が映った気がしたが、それも深く考えられないほどキョーコの体は熱に侵されていた。
ふんわりと宙に浮かぶように体が持ち上がったように感じたのは熱のせいなのか、現実なのか、キョーコはあやふやな世界で一人孤独と向き合いながらそんなことを感じていた。
「・・・・コ・・キョーコ?・・大丈・・か?」
夢の続きのような、ショータローの優しい声にキョーコは、ふんわりとほほ笑んだ。
「・・・に?・・なに?」
「飲めるか?」
口元に冷たいグラスの縁があたり、キョーコは急に現実に引き戻され大きく瞳を開いた。
「・・タ・ロー・・?」
驚きで見開かれた瞳は、いつもと違う優しいショータローの表情をとらえた。
「ったく・・人が説明している間に急に寝るなっつーの!」
言葉とは違い優しい眼差し
何かがいつもと違う・・・。
そのことにキョーコは急に不安になった。
「・・?・・でここに?」
「お前が意味不明なことを最後に言ったっきり・・電話にも出ないから心配したんだよ・・わりぃ~かよ?・・・で、さっきの話覚えてるのか?」
眠っていたキョーコのベッドに座り、ショータローはキョーコの顔を覗き込むように視線をとらえた。
ギシリと軋んだベッドの音が静かな部屋に不自然に響く。
何年も見慣れた表情なのに、初めて出会ったような不思議な感覚
・・・こんな優しい表情のショータローを見たことがない・・。
あぁ~そうか・・さっきの・・約束って・・・
「・・・・付き合う・・・ってこと?」
「・・・だよ・・ったく心配させんな!」
そっぽを向いたショータローの顔
かすかに赤く染まった耳が本当に心配していたことをものがたり、キョーコは心の奥がほっかりと暖かくなった。