キョーコの部屋の前に着くと、ノックをするべきか呼び鈴を鳴らすべきか考えていた。手に持った小ぶりな花束を見つめて、社さんの助言がなければパーティーにでも向かうのかと思わせるほど大きな花束を注文してしまうところだった。


クス、と思い出し笑いをして再びドアを見つけると、中から声が聞こえてきて蓮は驚いて非常階段のほうへ足を向けてキョーコの部屋の様子をうかがった。


ガチャ


「じゃーな、・・ったく、早く風邪なおせよ・・」


「うん・・・・ありがと」
キョーコの少し鼻声が聞こえてきた。胸に広がる切ない想いとドアから現れた男への嫉妬心で心がズキズキと痛む。
もし、自分がすでに彼女を手に入れていたならこんな風に隠れることなく、相手が誰なのか確認することができるのに・・・


「あ、キョーコ・・悪いんだけど・・明日19時~21時の間に一度携帯に連絡くれ・・」


「・・うん?・・あ、わかった・・連絡するね?」
静まり返った廊下では、2人の会話がよく聞こえた。可愛らしく小首をかしげる様子が目に浮かぶ


衣擦れの音がかすかに聞こえ、嫌な予感とともに少しだけ身を乗り出すと、男がキョーコを抱きしめているのが目に入った。


「ん、じゃな~」


キョーコはそれには返事をせずに、しばらくすると扉がパタンと音を立てて閉じた。蓮は大きなため息をついた後、少しの間考えてやはり彼女の部屋を訪ねることにした。