「・・・・蓮・・・蓮?どうしたんだ?」
考え事をしているというよりは、心ここにあらずといった蓮の様子に社は少し不安になって声をかけた。


「あ、いえ・・すみません。」
寂しそうな笑顔が何を考えていたのかを物語っていた。


「キョーコちゃんの事だろう?・・しょうがないだろう?マネージャーといえば、いわば家族のような存在だ。たかが2~3週間の付き合いでも四六時中顔を合わせていれば、仲が良くなるもの当たり前だよ・・」


「そうですね・・」
蓮は、日々綺麗になっていくキョーコと日増しに仲良くなっていく2人の関係が不安で仕方なかった。


「蓮・・・気になるなら・・・っと、電話だ・・すまん・・あれ?・・・・ぐふふふふ」
社は表示された名前を見ると、ニヤリと蓮に視線を向けて気味の悪い笑いを浮かべて嬉しそうに電話に出た。



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「ん~~~・・・・ぅん・・・あぁああああ・・・はぁ~」
メモを読みながらキョーコは一人唸っていた。


ラブミー部の部室で拓斗にもらったメモと睨めっこをはじめてすでに30分以上が経過している。このメモを持って蓮に相談に行くべきか、社に相談に行くべきか真剣に悩んでいた。
すでに飲み干してしまった空のカップに気が付かずキョーコはカップを口に運ぶ、さっきまで入っていた琥珀色の液体もいつの間にか空になっていることに気が付くと、あきらめたようにため息をついて、弄んでいた携帯電話を再び手にした。


「はぁ~・・・拓斗さんって仕事には容赦ないわよね・・・」
渡されたメモを強く握りしめると、キョーコは社の携帯電話に連絡した。


「お疲れ様です。社さん・・その、折入ってご相談したいことがあるのですが、今お時間大丈夫ですか?」


タイミングよく休憩時間だよ、とやさしい声が答えるのを聞いてキョーコは安堵のため息をつく。


「えぇ~っとですね・・そ、そ・・・その・・・・ぁあ、あのですね・・・」
さっきまでの勢いが急になくなり、キョーコはしどろもどろ話を進める。


『うん、どうしたの?』


「そ、その・・拓斗さんに自分の欠点を指摘してもらって・・・・ぅうん、あ・・えぇ~っと、それをなおしたいのですが・・・・その、どうしても一人では・・無理なので・・もし、ご都合が付く時間があれば・・その・・」


『俺で何か役に立てるのかな?・・もちろんだよ・・で、何を手伝ってほしいの?蓮じゃなくて俺で良かった?』


「あぁあの・・ですね・・・その・・つ、敦賀さんにお願いできればと思ったのですが、お忙しい先輩にこんなことを頼んでしまってもよいのかどうか・・あのわからなかったのでそのまずは、社さんにご連絡させていただきました。・・もし、無理でしたらきっぱりと!!お断りしていただいて問題ありませんので!!!」
力強いキョーコの声に社がくすくすと笑うのが聞こえる。


『・・蓮がキョーコちゃんの頼みを断るとは思えないよ・・で、何を頼みたいのかな?それとも俺は蓮の予定だけを教えればよいかな?』
笑いを含んだやさしい声を聴いて、キョーコはやっと体中の緊張を解いた。


「はい、あのできれば直接お話しできればと思います・・あ、すみませんありがとうございます。」


蓮に電話をかわるよ。と言われキョーコは少し緊張しながら電話越しの2人のやり取りを聞き入る。しばらくすると聞きなれた蓮の声が自分の名前を呼んだ。