「令和3年度都内私立中学校入学者選抜実施要項」が東京都のホームページで公表されました。
この実施要項には来春実施される、都内私立中の入試日程など(試験科目、試験日、合格発表日、入学手続日)がわかりやすくまとめられています。
中学入試だけでなく、高校入試の実施要項も同時期に公表されているのですが、中学入試の実施形態の多様さには驚くばかりです
珍しい入試として、プログラミング、科学実験・レポート作成、グループワーク、プレゼン、脱出ゲーム?・・・などがあります
また、オンライン入試が一部の学校で行われるみたいですね。
あくまで、受験者の少ない帰国生を対象とした面接入試のみのようですが、コロナ禍で試行的な試みという意味合いもあると思います
2つの入試要項を比べると、中学入試と高校入試の違いがよく見えてきます。
今回、都内男子校に注目してみました。
まず、中学入試と高校入試の募集人数をまとめると、以下の円グラフになります。
2021年中学入試の募集人数は25,571名と発表されています。そのうち男子校は6,085名であり、その割合は24%です。
近年、共学化の流れが強まる中でも、都内では難関校を中心に私立男子校は根強い人気があります。
一方、2021年高校入試の募集人数は37,973名と発表されています。そのうち男子校は2,705名であり、その割合は7%に過ぎません。
高校入試の募集人数は、中学入試より12,000名以上も多いのですが、その70%以上は共学校という特徴があり、男子校の募集人数は、中学入試と比べると半分以下になっています。
次に、男子校の募集人数(2,705名)を学校のタイプで分類しました(下の円グラフ(左))。
その内訳は、中高一貫校が1,885名、中高一貫校以外(中学募集を行わず高校募集のみの学校)が820名です。
調べてみると、現在、都内で高校入試のみを行っている私立男子校はわずか3校しかありません。
かつては、高校募集のみを行う男子校が数多くありましたが、平成に入って以降、中高一貫化または共学化し、その数は減っていきました。
中高一貫校を学校のタイプでさらに分類すると、進学校が1,090名で、大学付属校が795名です(上の円グラフ(右))。
この進学校について、中学入試の合不合80%偏差値を確認すると、偏差値50以上の学校はわずか5校で募集人数は330名(開成100名、城北85名、巣鴨70名、桐朋50名、世田谷学園25名)であることがわかりました。
一方、中学受験での募集状況はどうでしょうか。
上記学校の中学募集の合計人数は1,190名(開成300名、城北270名、巣鴨240名、桐朋180名、世田谷学園200名)であり、高校募集の3倍以上になります。
さらに、高校募集をしない男子校として(合不合偏差値50以上)、麻布300名、駒場東邦240名、武蔵160名、早稲田300名、海城320名、芝280名、本郷280名、攻玉社240名があり、その募集人数は2,120名にもなります。
これら中学募集の人数を合計すると、1190+2120=3,310名 であり、
中学入試 3,310名 vs. 高校入試 330名
になります
高校入試では難関私立中高一貫校の募集人数が、中学入試のわずか10分の1に減ってしまうのです。
中学受験で振られた熱望校に、高校受験で再挑戦することは困難になりつつあります
都内私立男子校は6ヵ年一貫教育を推進しており、最近では中高一貫校には中学から入学してこそメリットがあると考える人が増えてきました。
その結果、
6ヵ年一貫教育の強化 → 高校募集の人気低下 → (推薦入試を導入しても)優秀な人が集まらない → 募集人数の減少 → さらに人気低下・・・
このようなスパイラルに入っていったものと考えられます。
近年、都内では高校募集を停止する私立高が増えており、私立校の完全中高一貫化の流れはますます加速化しています。
高校入試では、早慶などの大学附属高や都立トップ高の人気が高いのも納得できますね