Q&A1700 卵の質と刺激方法の関係は? | 松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

生殖医療に関する正しい知識を提供します。主に英語の論文をわかりやすく日本語で紹介します。

Q 38歳、AMH 0.35ng/ml
高刺激では数は取れても質が悪いという通院中の医師の考えの元、2016年11月からレトロゾール+HMGによる刺激、プラノバールでリセットの治療中。過去の採卵回数は4回、移植2回、1回ホルモン補充周期で妊娠し9Wで稽留流産。AMHの値の推移を見ていないため、低AMH値がピルやホルモン補充による一時的なものなのか不明です。

①採卵2個
成熟卵→体外受精→8分割凍結 G3
成熟卵→顕微授精→異常受精
②採卵2個
成熟卵→体外受精→多精子受精
成熟卵→体外受精→D6桑実胚で変性 G3
③採卵1個
成熟卵→体外受精(D5胚盤胞で凍結 G1)
④採卵5個
成熟卵→体外受精→D5胚盤胞で新鮮胚移植 G3
成熟卵→顕微授精→D7胚盤胞で培養中止 G2
成熟卵→顕微授精→D6胚盤胞で培養中止 G2
未成熟卵→顕微授精→D6胚盤胞で培養中止 G3
未成熟卵→成熟せず

クロミッドより若干高刺激のレトロゾールによる誘発で上記成果ですが、低AMHで高刺激を試す価値はどれくらいあるのでしょうか。D3卵胞チェックでは毎月3個~7個程度定常的に卵胞は確認できています。中~高刺激による採卵は、採れる卵子の質が悪いというのは本当なのか、本当だとするとどのような考えなのかご教授いただけるとありがたいです。

A 日本では、不思議なこと刺激周期に対する反対意見が幅をきかせていますが、海外では基本は刺激周期です。保険適応で体外受精ができる国では、刺激周期しか認めていない例もあります。この事実からも明らかなように、
中~高刺激による採卵は、採れる卵子の質が悪くなるという話には明確な根拠はありません。むしろ、一度にたくさんの卵子が取れますので、時間短縮になります。したがって、低AMHで高刺激を試す価値は十分あります。

また、クロミッドより若干高刺激のレトロゾールというのも誤りです。クロミッドは卵胞が増えますが、レトロゾールは卵胞が減ります。
AFCが毎月3個~7個あるのでしたら、十分刺激周期が可能です。ぜひ、刺激周期で行ってみてください。
 
なお、このQ&Aは、約4〜5ヶ月前の質問にお答えしております。