Q 人工甘味料について少し前に見た研究なのですが、最も普及しているアスパルテームが卵巣機能低下、低AMH等につながることを改めて示唆するものがございました。ご覧になりましたでしょうか。
"Aspartame Consumption, Mitochondrial Disorder-Induced Impaired Ovarian Function, and Infertility Risk"「①アスパルテームの摂取は、若い女性における不妊症リスクの増加と関連(オッズ比:1.79。②アスパルテームは性周期を乱し、AMHレベルを低下させた。アスパルテーム投与は抗酸化活性を抑制し、卵巣や顆粒膜細胞で酸化ストレスが高まる結果となった。この現象は、アスパルテームによるミトコンドリア機能の低下(中略)によるもの」といった内容です。
もともとDNA断片化を起こすと言われて特に男性不妊に関連付けられることが多かったようですが、これや同様の人工甘味料はプロテインパウダーなどに必ずといってよいほど入っていますから、妊活やジム、置き換えダイエットでせっせと摂取している女性にとっては非常に悪いニュースのように思われます。先生は、通常量の暴露でしたら問題ないと思われますか。
A ご指摘の論文は下記です。①前半のみヒトでのデータ、②後半は全て動物実験(ラット)のデータです。
Int J Mol Sci 2022; 23: 12740(台湾)doi: 10.3390/ijms232112740
要約:840名の妊婦を対象に、アスパルテームの摂取調査を行い、妊娠までに要した期間との関連を後方視的に検討しました。アスパルテーム未摂取と比べたアスパルテーム摂取群のオッズ比(信頼区間)は下記の通り(有意差のみられた項目を赤字表示)。
オッズ比 妊娠までに要した期間 不妊症リスク
全年齢 1.28(-1.34〜3.91) 1.30(0.87〜1.93)
35歳以下 1.26(-1.60〜4.11) 1.79(1.00〜3.22)
36歳以上 1.39(-3.16〜5.95) 1.01(0.58〜1.75)
解説:アスパルテームは、1965年に米国のサール薬品がガストリンの研究中に偶然発見した甘味であり、現在の製法を開発したのは日本の味の素株式会社で、1983年に日本含め世界各国で認可されました。ショ糖の100〜200倍の甘味を持ちます。その後、味の素は、スクロースの2万〜4万倍の甘味を持つアドバンテームを開発し、2014年に世界で認可されています。現在では、人工甘味料をNonnutritive Sweeteners(NNS)と呼び、食べ物、飲み物、薬剤などに含まれています。アスパルテームと健康に関する論文は多数ありますが、ほとんどの研究は動物実験であり、ヒトでの研究はごくわずかに留まっています。例えば、糖代謝異常、脂質代謝異常、肝機能障害、腎機能低下、酸化ストレス増加、ミトコンドリア機能低下などは動物実験のデータです。動物実験では、妊活への影響を示す論文も多数ありますが、賛否両論があり結論は出ていません。ヒトでの研究では、例えば、ART成績低下の可能性が報告されていたり(Reprod Biomed Online 2018; 36: 145)、精子への影響はない(Food Addit Contam 2003; 20: 1097)などです。
まだよくわからない部分が多いですので、人工甘味料の大量摂取は控えた方が無難でしょう。
下記の記事を参照してください。
2019.7.19「Q&A2262 ☆人工甘味料は大丈夫?」
2015.5.18「Q&A696 人工甘味料で流産?」
なお、このQ&Aは、約3週間前の質問にお答えしております。