Q&A4016 着床の窓と胚のスピード | 松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

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生殖医療に関する正しい知識を提供します。主に英語の論文をわかりやすく日本語で紹介します。

Q 2023.12.29「Q&A3890 判定日のHCGが1桁です」、2024.1.23「Q&A3915 3890の続き」で相談したものです。詳細に説明してくださりありがとうございます。とても助かっています。またまた先生のおっしゃる通りになりました。フローラ検査をした結果ラクトバチルス0.1%で、prevotella 22.5%、atopobium 18.7%で、フラジールが双方に効果ありとの結果だったのでフラジール250を1回1錠 朝夜7日間飲みました。


胚のグレードにあった移植日を選ぶ方が良いとの事だったので質問です。
①ERpeakとは着床する受容体がでる時期を検査するものではないのでしょうか。グレード3を移植する日がERpeakの結果の日なのでしょうか。良く分からず困ってます。私は+1日後だった為、ホルモン補充周期の場合 黄体ホルモン開始から6日目にグレード3を移植すると言う事なのでしょうか。それともグレード5を6日目に移植すると言う事なのでしょうか。
②グレード3から4になるには0.5日、4から5になるには0.5日、つまりグレード3から5になるには1日かかる、グレード3から6になるのは1.5日かかるという計算ですが、ハッチング後のグレードが何になっているかと、移植日当日のホルモン値、いつから黄体ホルモンを始めるかが重要なのですよね。テープ開始から21日目までに移植するのが理想的という記事もネットで見ましたが、どのようにERPeakの結果を活用すれば良いのか教えてください。
③採卵についてですが、ホルモン値と卵胞の大きさではどちらで判断するのでしょうか。個数や主席卵胞その他の卵胞の大きさにもよるとは思うのですが、例えば2つで主席卵胞は育っているのにもう一つが小さく、ホルモン値は2つ分なく低いなどの場合は、主席卵胞の大きさと1つ分しっかりホルモン値が出ている場合は、更に注射などして小さい卵胞が育つ事をさせた方がいいと思うのですが、そうすると育ちきっている主席卵胞は排卵してしまうのでしょうか。

 

A 

①皆さん誤解されていることが多いのですが、着床の窓の検査を行った日に着床するのではありません。着床の窓の検査の2日後に着床すると考えられています。したがって、着床の2日前の子宮内膜の遺伝子の状態を調べる検査になります。また、受精卵を受け入れる受容体は存在しません。そこで、着床の窓にズレがない場合には、下記のようになります。

黄体ホルモン開始からの日数 5.0 5.5 6.0 6.5 7.0

移植時の胚盤胞のステージ  3→ → → → →着床

                 4 → → →着床

                   5 → →着床

                      6→着床

 

ERPeakの結果が、prereceptive:+1の場合には、下記のようになります。

黄体ホルモン開始からの日数 6.0 6.5 7.0 7.5 8.0

移植時の胚盤胞のステージ  3→ → → → →着床

                 4 → → →着床

                   5 → →着床

                      6→着床


②上記のように黄体ホルモン開始からの日数だけが重要であり、エストロゲン製剤(E2製剤、エストラーナテープなど)開始からの日数は着床の窓とは無関係です。しかし、胚移植までのE2ホルモンの補充日数が28日以下が望ましいとされています(月経周期3日目からホルモン補充を開始した場合には月経周期30日目までに移植すれば良いことになります)。

下記の記事を参照してください。

2019.6.28「ホルモン補充周期による凍結融解胚移植における移植日までの最適な日数は? その2

2018.5.22「☆ホルモン補充周期による凍結融解胚移植における移植日までの最適な日数は?

 

③ホルモン値と卵胞の大きさの両者から、最適な採卵日を決定します。しっかり排卵抑制の対策(ロング法やショート法ではブセレリン、アンタゴニスト法ではセトロタイドやガニレスト、PPOS法ではルトラールやMPAやデュファストンなど)をとっていれば、排卵してしまうことはほぼありません。しかし、卵胞が大きくなりすぎると、過熟(未熟の逆)のため卵子が取れないことがあります。また、採卵に最適な主席卵胞の大きさには個人差がありますので、28mmが良い方や16mmが良い方など人それぞれです。

 

なお、このQ&Aは、約3週間前の質問にお答えしております。