Q&A434 皮様嚢腫 | 松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

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生殖医療に関する正しい知識を提供します。主に英語の論文をわかりやすく日本語で紹介します。

Q 結婚1年、37歳、子宮内膜ポリープ、卵巣嚢腫(皮様嚢腫、6 cm)
ポリープは先日の生理後に超音波で確認したところ、無くなったようです。嚢腫は、腹腔鏡手術の予定となりました。
2014.4.23「☆卵巣嚢腫の取り扱いについて」を拝見しました。
「皮様嚢腫は経過観察が良い」ということで、果たして手術をするべきなのかという気持ちになっています。また、「皮様嚢腫の摘出手術を行う場合のAMH低下は、チョコレート嚢腫の場合より軽い」ということは、手術による影響は少ないと考えてもよいのでしょうか。このままにしておいて、妊娠中に捻転したり、破裂する可能性を考えると、早めに手術をしたほうがいいのか、手術による合併症が起きる可能性などを考えると温存した方がいいのか、先生は温存と手術のどちらを勧めますか。また、手術をする場合は「モノポーラーではなくバイポーラー」ということ以外に、開腹、体外法、体内法などについては、どれが良いかというご意見はお持ちでしょうか。
長野県のA病院が良性の卵巣腫瘍の手術数が多いようなので、そちらで行う予定です。実家が東京なので、もし東京でお勧めの病院があれば教えていただけると嬉しいです。

A 診察してみないことには、何とも言えませんが、一般的には手術をすると思います。ブログで紹介したフランスの論文では、「皮様嚢腫は経過観察が良い」と言う見解を示していますが、これが全てではありません。手術をするとすれば、「バイポーラーを使い、嚢腫の壁の凝固は避ける」ようにすれば、AMH低下は最小限になります。手術の方法については、卵巣に対する影響とは無関係ですので、医師の経験に左右されるでしょう。

どの病院がお勧めかということについては、私が直接確認できた情報を発信することはありますが、未確認情報をお勧めすることはありません。内視鏡専門医が大勢在籍している病院が信頼度の高い病院であると考えます。

2013.6.8「☆チョコレート嚢腫のある方の注意点」には、下記のように記載しました。
「産婦人科医には主に3種類の専門分野(産科、腫瘍、生殖)プラス腹腔鏡手術の専門医がいます。同じチョコレート嚢腫を手術する場合でも、腫瘍の先生は、癌の場合の再発を恐れるため、嚢腫を大きく取ることを心がけます。生殖の先生は、妊孕性(妊娠する力)を残そうとするため、嚢腫を小さく取ることを心がけます。腹腔鏡手術の先生は、傷を小さくすることを心がけます。何が正しいというのではなく、目的が何であるかによって手術の考え方が変わる訳です。」