Dr.Mの診療録 その3:スーパーボール | 松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

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生殖医療に関する正しい知識を提供します。主に英語の論文をわかりやすく日本語で紹介します。

 膣内に異物が入ってしまい取れなくなることは、それが意図的であろうがなかろうがしばしばあるものだ。大人の場合は内診台で簡単に取れる。しかし、赤ちゃんや幼児の場合は、全身麻酔をかけて手術室で取ることが必要だったり結構大袈裟な出来事になる。膣の中を診察する器具は「クスコ」といって、サイズも様々で、小学生なら一番小さいSSSサイズのものが使えるから、じっとしていてもらえば大丈夫だが、幼児には難しい。

 ある時、幼稚園児がお風呂場で遊んでいて、たまたまスーパーボールの上に座ってしまったらしい。その時、膣にスポッと入ってしまった。お母さんが気づいて、取ろうとしたら奥に入り込んでしまい、どうにもならなくなって救急外来にいらしたのである。幼児の膣は狭いがちゃんとあるわけで、何かいい器具はないかと救急外来の看護師に訊くと、「そういえば、耳鼻科の耳鏡なんてどうでしょう」と。お子さんをなだめながら、耳鏡を膣内に挿入しスーパーボールを挟んで取り出したのである。わずか数秒の出来事だった。麻酔も入院もせずに、すぐお帰り頂くことができた。女の子は、小さくても膣があるので、お風呂場での小さな玩具には注意が必要である。