ユリプリスタールの子宮内膜への作用 | 松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

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本論文は、ユリプリスタールの子宮内膜への作用について検討したものです。

 

Hum Reprod 2017; 32: 531(英国)

要約:39〜49歳の女性9名ユリプリスタール(5mg)で9〜12週治療した後に子宮摘出術を行い、その際に子宮内膜を採取しました。対照群として、38〜52歳の女性の増殖期と分泌期の子宮内膜をそれぞれ9名ずつ採取したものを用いました。子宮内膜の女性ホルモン受容体及び黄体ホルモン関連遺伝子のmRNA及び免疫組織化学検査を行い、子宮内膜増殖能も併せて検討しました。ユリプリスタール群は、分泌期群と比べ、PR(黄体ホルモン受容体)、AR(アンドロゲン受容体)の有意な増加を示し、IGFBP1、FOXO1、IL15、HAND2のmRNAの有意な減少、IHH、HOXA10のmRNAの有意な増加を認めました。また、ユリプリスタール群は、増殖期群と比べ、FOXM1のmRNAの有意な減少と子宮内膜増殖能の有意な低下を認めました。

 

解説:過多月経(月経血量増加)は生殖年齢の女性の4人に1人に認められ、女性のQOLの大きな妨げになっています。英国では100万人の女性が過多月経に悩まされていると推測されます。ユリプリスタールは子宮筋腫の治療薬として欧州で広く用いられていますが、過多月経の治療にも用いられます。本論文は、過多月経の治療に有効である科学的根拠の一つとして、子宮内膜への直接作用を示しています。