血液型と不妊・不育の関係 | 松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

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生殖医療に関する正しい知識を提供します。主に英語の論文をわかりやすく日本語で紹介します。

米国生殖医学会誌(Fertil Steril)では「Open Debate」というコーナーがあり、問題提起とディスカッションが行われています。今回、血液型と不妊・不育の関係についての「Open Debate」が掲載され、大変興味深く思いましたので、ご紹介いたします。

 

Fertil Steril 2017; 107: 579(スペイン)

要約:今から50年前の1967年に、夫婦のABO血液型不適合と不妊・不育の関連を示唆する論文が、Fertil Steril誌に2編掲載されました。ABO抗体が、精子に結合、頸管粘液減少、受精障害をもたらすのではないかとするものです。しかし、証拠は不十分でした。最近になり(2014年以降)、再びABO血液型不適合と不妊・不育に関する論文が散見されるようになり、卵巣予備能低下(AMH低下)、卵巣過剰刺激症候群(OHSS)、不育症、血栓症、体外受精反復不成功との関連を示唆していますが、いずれもその根拠は不十分です。

 

解説:日本人は血液型のネタが大好きな国民ですが、外国では血液型ネタはほとんど関心がない話題です。そんな外国から、血液型のネタが不妊や不育と関係あるのではないかとの論文が出ていることに驚きを隠せません。もちろん、根拠不十分ですから結論的なことは言えませんが、ABO抗体による免疫応答の不備が不妊や不育に関連がある可能性は十分あり得ると思います。本論文は今月掲載されましたので、このdebateがどうなっていくのか見守りたいと思います。