Q&A1568 抗リン脂質抗体陽性のピル使用は? | 松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

生殖医療に関する正しい知識を提供します。主に英語の論文をわかりやすく日本語で紹介します。

Q 40才、子宮内膜症、37才から体外移植

これまでに妊娠8週と9週で2回流産しており、不育症の検査を受けたところ、抗カルジオリピンIgM抗体がSRLの検査で2回検査して、15, 27と陽性でした。今後移植時はアスピリンを使用する方針になっております。

AMH 0.98、クロミフェン、自然周期、フェマーラなど自然~低刺激での治療を行っています。遺残卵胞ができやすく(例:D3でのE2 98、FSH 7.6)、ピルの使用について話にはでるのですが、抗カルジオリピンIgM抗体が陽性のため、血栓症のリスクもあり、処方に至らない、という状況が何回かあります。私のように抗カルジオリピンIgM抗体が陽性の場合、ピルの使用は血栓症のハイリスクなのでしょうか。松林先生ならばこのような状況でピルを処方されますか。

 

A 私は、下記の理由によりピルは用いません。

1 ピルを使用すると、一時的に卵巣機能が低下しますので(AMHも低下します)、極力ピル使用は避けたいものです。

2 かつては遺残卵胞は良くないとされていましたが、最新の考え方では、遺残卵胞はできても採卵に支障はありません。したがって、遺残卵胞を防ぐ目的でのピル使用は不要です。

3 果たして、抗リン脂質抗体陽性の場合にピル使用ができないかについてですが、必要ならば投与すべきと考えます。そもそも、生殖年齢の女性におけるピルによる血栓症のリスクはそれほど大きなものではありませんが、日本国内だけで大騒ぎをしているのが現状です。日本ではピルの認可までに10年を要しました。ピル解禁に猛反対をしたあるグループがあったからです。海外では薬局でそのまま購入できるピルに、様々な注釈をつけ、やっと認可がおりました。その中で、最も大きなハードルが血栓症です。実際は妊娠中や閉経後の血栓症のリスクが圧倒的に高いのですが、ピルだけが悪者に仕立て上げられました。

 

下記の記事を参照してください。

2017.2.3「ピルの血栓リスク:ASRMガイドライン