これまでERAテストといえば、開発者であるスペインのグループからの報告しかありませんでした。本論文は、ERAを用いたカナダからの報告です。
J Assist Reprod Genet 2018 Jan 11. doi: 10.1007/s10815-017-1112-2(カナダ)
要約:2014〜2017年にERAテストを実施した88名を対象に、融解胚移植の成績を後方視的に検討しました。内訳は、初回胚移植7名、1回胚移植不成功19名、2回以上胚移植不成功62名です。ERAテストで受容期49名(55.7%)、非受容期39名となりました。ERA結果に基づきホルモン補充周期にて胚移植を行ったところ(受容期の場合は通常法P+5で移植40名、非受容期の場合は適切な時期にズラして移植P+4 or P+6 or P+7、31名)、前者と後者の着床率、妊娠継続率、出産率に有意差を認めませんでした。PGS正常胚に限った検討でも、前者(26名)と後者(17名)の着床率、妊娠継続率、出産率に有意差を認めませんでした。さらに、2回以上胚移植不成功でPGS正常胚に限っても、前者(18名)と後者(12名)の着床率、妊娠継続率、出産率に有意差を認めませんでした。
解説:着床障害の研究も不育症の研究も、正常胚で行なって初めてその有効性が確認できます。しかし、これまでに構築されたエビデンスのほとんど全ては正常胚で行われた検討ではありません。従って、検査の妥当性や治療の正当性については正常胚を用いて全てやり直す作業が必要です。着床の窓も同様であり、正常胚でのデータが待ち望まれていました。本論文は正常胚で着床の窓を検討したものであり、ERAテストの有用性を示唆しています。しかし、正常胚といってもわずか43名での検討にすぎず、しかも後方視的検討ですので、結論を導くことはできません。正常胚での大規模な前方視的検討が必要であると、著者も締めくくっています。しかし、最も多くのデータを持っているスペインのグループからは何故か正常胚での大規模な前方視的検討の報告が出てきません。このような場合に私は、データがあるけれども発表できない理由(例えば、ERAテストの有用性を否定するようなデータが出た場合など)を勘ぐってしまいます。何れにしても、ERAテストについては何とも言えない状況だと思います。
着床の窓については下記の記事を参照してください。
2018.3.14「ER Map®/ER Grade®とは?」
2018.1.31「非侵襲的NCS検出法」
2017.10.19「☆着床の窓:スペインから続報」
2015.9.4「☆黄体ホルモン濃度はいくつあれば良い?」
2014.12.21「☆ERAテストについて」
2014.12.19「子宮内膜の着床能の研究 続報」
2014.11.25「子宮内膜の着床能の研究」
2014.10.6「☆着床の窓がズレている場合」
2014.8.10「「着床の窓」について」