初潮の頃の大気汚染で生理不順? | 松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

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生殖医療に関する正しい知識を提供します。主に英語の論文をわかりやすく日本語で紹介します。

本論文は、初潮の頃の大気汚染により生理不順のリスクが増加することを示しています。

 

Hum Reprod 2018; 33: 512(米国)

要約:1989年以降にNurses' Health Study II(NHSII)に登録した116,430名(25~42歳)の看護師のうち34,832名の方について、1991年高校生の時の大気中の総浮遊粒子状物質(TSP)と生理不順に関する横断調査を行いました(後方視的検討)。なお、調査成功率は97.76%でした。TSP<65.5と比べ、TSP>110では生理不順が有意に増加し、中等度不順1.08倍、常時不順1.08倍、中等度不順かつ男性ホルモン過剰1.11倍となりました。また、TSP増加に伴い生理不順が回復するまでの期間が有意に長くなりました。

 

解説:生理周期は生理学的かつ生殖医学的に重要な指標のひとつであり、ホルモンのみならずストレスや環境に左右されることが知られています。通常、規則的な生理周期は初潮から数年以内に構築されます。本論文は、この時期に大気汚染の影響を受けた場合にどうなるかを後方視的に検討したものであり、初潮の頃の大気汚染により生理不順のリスクが増加することを示しています。しかし、後方視的検討であるためにリコール(思い出す)バイアスがかかります。前方視的検討が必要なのは言うまでもありません。

 

なお、TSPは50 μm以下の大気中の総浮遊粒子状物質を指し、NOxやPM(PM2.5など)暴露により妊孕性が低下することが報告されています(妊娠率低下、出産率低下、流産率増加)。


Nurses' Health Study IIについては、下記の記事を参照してください。

2016.7.7「☆子宮内膜症の方は不妊になりやすいのか
2015.8.22「不妊症、妊娠治療と高血圧のリスクは?

2015.3.22「甘味飲料水と初潮の関係

2014.11.28「☆ニキビと内膜症の関係

2014.10.30「☆卵巣癌のリスクを減らす方法

2013.7.18「☆痩せすぎは内膜症になりやすい?