本論文は、フタル酸含有薬剤により精液所見が低下することを示しています。
Hum Reprod 2018; 33: 503(デンマーク)
要約:2006〜2016年にデンマークの体外受精実施リストに登録された男性のうち、精液所見低下の18,515名と精液所見正常な31,063名を対象に、精液検査90日以内のフタル酸含有薬剤の服用状況を調査しました(ケースコントロール研究)。各群57名と72名で90日以内にフタル酸含有薬剤を使用しており、フタル酸含有薬剤使用群の精液所見低下は1.30倍に有意に増加していました。また、各群81名と78名で90日以内にポリマー含有薬剤を使用しており、ポリマー含有薬剤使用群の精液所見低下は1.71倍に有意な増加が認められました。なお、現時点でポリマー含有薬剤使用群の精液所見低下は最も高く2.80倍でした。ただし、暴露量と精液所見低下の関連はありませんでした。
解説:フタル酸暴露による精液所見の低下は多数報告されています。しかし、フタル酸はすぐに分解され尿中に排泄されてしまうため、真の暴露量を知ることは困難です。一方で、フタル酸やポリマーを含む薬剤の摂取量を調査することにより、活性型のフタル酸やポリマーのリスクを知ることができます。本論文は、このような背景の元に行われた研究であり、フタル酸やポリマーを含む薬剤摂取により精液所見が低下することを示しています。環境中の物質と異なり、フタル酸やポリマーを含む薬剤摂取は避けられますので、このような薬剤を服用しない心がけ、あるいは製造しない技術開発が進んで欲しいと思います。