AMHとテストステロンと妊娠の関係 | 松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

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生殖医療に関する正しい知識を提供します。主に英語の論文をわかりやすく日本語で紹介します。

本論文は、AMHとテストステロン(男性ホルモン)と妊娠の関係について検討したものです。

 

Fertil Steril 2018; 109: 540(米国)doi: 10.1016/j.fertnstert.2017.11.014

要約:2007〜2011年に、ユタ、ニューヨーク、ペンシルバニア、コロラドの4箇所1〜2回の流産既往があり、不妊症ではない1228名(18〜40歳、平均BMI 26.4、白人95%)を対象に、半年間妊娠を目指していただき、妊娠を目指す前のAMH値とテストステロン値と妊娠するまでの期間(TTP=time to pregnancy)を前方視的に検討しました(EAGeRスタディー)。AMHとテストステロンを4群に分け比較したところ、下位3/4と比べ上位1/4で無排卵のリスクが1.58倍に有意に高くなっていました。しかし、AMHとテストステロンは、妊娠までの期間、妊娠率、流産率との関連は認められませんでした。なお、多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)やその他の疾患のある方は除外しています。

 

解説:意外かもしれませんが女性の卵胞発育には男性ホルモン(テストステロン)が必要です。従って、テストステロンが不足している方には補充する作戦が奏功します。一方、PCOSの方はAMHとテストステロンが高いことが知られています。本論文の研究はこのような背景の元に行われ、PCOSでない方でもAMHとテストステロンが高い方は無排卵のリスクが高いことを示しています。本論文は、不育症の方にアスピリンの有効性を調査する前方視的検討(Effects of Aspirin in Gestation and Reproduction=EAGeRスタディー)が主たる目的のスタディーでしたが、AMHとテストステロンに関する興味深いデータが見出されたため、本論文が誕生しました。

 

EAGeRスタディーについては下記の記事を参照してください。

2017.5.28「コレステロールと妊娠

2016.4.4「不育症に妊娠前からの低用量アスピリン療法は有効か