一般妊娠治療における黄体期のE2・P4の最小値は? | 松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

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生殖医療に関する正しい知識を提供します。主に英語の論文をわかりやすく日本語で紹介します。

チームリプロからの最新の論文を一つご紹介します。

 

BMC Res Notes 2018; 11: 61(日本)doi: 10.1186/s13104-018-3188-x

要約:2013〜2016年にタイミングあるいは人工授精を行なった一般妊娠治療の女性で、排卵後1週間のE2およびP4を採血し、妊娠が成立した297名297周期E2値およびP4値後方視的に検討しました。また、同一女性の非妊娠周期(406周期)のE2値およびP4値と比較検討しました。妊娠周期のE2(188.5 pg/mL)とP4(14.5 ng/mL)は非妊娠周期のE2(162.6 pg/ mL)とP4(10.7 ng/mL)と比べ有意に高くなっていました。妊娠周期のE2とP4の5パーセンタイルはそれぞれ70.2 pg/mLと5.6 ng/mLであり、E2とP4の最小値はそれぞれ23.4 pg/mLと2.3 ng/mLでした。なお、E2・P4値と流産の関連は認めませんでした。

 

解説:一般に排卵後のP4値が1.0 ng/mL以上あれば排卵があったとされ、排卵後のP4値は排卵の良い指標とされていますが、妊娠可能なP4値の最低ラインは明らかにされていませんでした。唯一、hMGを使用した周期での検討があり、その場合のP4値の最低ラインは10.83 ng/mLと報告されています。また、E2値も排卵や黄体化の指標として考えられています。本論文はこのような背景のもとに行われ、妊娠可能なE2値とP4値の最低ラインとして、それぞれ70.2 pg/mLと5.6 ng/mLを示しています。この数値はあくまでもタイミングあるいは人工授精の場合の最低ラインを示していますが、自然排卵周期による凍結胚移植の際に必要なE2・P4値の一つの目標としても良いかもしれません。なお、下記の記事より、ホルモン補充周期の融解胚移植の際のP4値の上限値は20 ng/mLです。

 

チームリプロは、体外受精やTESEだけでなく、一般妊娠治療にも力を入れていますので、全ての方のニーズにお応えできる体制をとっております。

 

下記の記事を参照してください。

2016.7.5「☆P4が高いと妊娠率が低下し流産率が増加する!?