☆ホルモン補充周期による凍結融解胚移植における移植日までの最適な日数は? | 松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

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本論文は、ホルモン補充周期による凍結融解胚移植における移植日までの日数を検討したものです。

 

Hum Reprod 2018; 33: 905(フランス)doi: 10.1093/humrep/dey041

要約:2012〜2015年にホルモン補充周期による凍結融解単一胚盤胞移植を実施した1377周期について、胚移植までのE2ホルモンの補充日数別に4群(21日以下330周期、22〜28日665周期、29〜35日289周期、36〜48日93周期)に分け前方視的に解析しました(ランダム化試験ではない)。21日以下を1.0として出産率を比較すると、22〜28日は有意差はありませんでしたが、29〜35日で0.66倍に、36〜48日で0.49倍に有意に低下しました。この主な原因は流産率増加であり、21日以下を1.0として流産率を比較すると、36〜48日で2.37倍に有意に増加していました。ホルモン補充周期による凍結融解胚移植における出産率に影響を与える因子について多変量ロジスティック回帰分析を行なったところ、3BB以上の良好胚盤胞で1.74倍に有意に増加、35歳以上で0.72倍胚移植までのE2ホルモンの補充日数29〜35日で0.65倍36〜48日で0.49倍に有意に低下しましたが、過去の移植回数、子宮内膜の厚さ、E2製剤の種類、黄体ホルモン投与開始日の黄体ホルモン濃度との関連は認めませんでした。

 

解説:ホルモン補充周期による凍結融解胚移植は、常に一定の条件が構築できるため、いつ移植日を設定しても問題ないと考えられていました。本論文は、E2ホルモンの補充日数にターゲットを絞って検討したものであり、胚移植までのE2ホルモンの補充日数が28日以下であれば問題ないことを示しています。29日以降(特に35日以降)の出産率低下は流産率増加によることを示しています。生理周期3日目からホルモン補充を開始した場合には生理周期30日目までに移植すれば良いことになります。