リーキーガット症候群にルビプロストンは? | 松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

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本論文は、リーキーガット(leaky gut=腸管壁浸漏)症候群の治療にルビプロストンが有効である可能性を示唆しています。

 

Plos One 2017; Apr 14; 12(4): e0175626(日本)doi: 10.1371/journal.pone.0175626. eCollection  2017

要約:健康な男性28名(20〜60歳)を対象にジクロフェナク(75mg/日)7日投与により擬似リーキーガット状態を作り、ルビプロストン(24μg/日)28日投与による腸管透過性を前方視的に評価しました(ランダム化試験、非ブラインド)。なお、3ヶ月以内のNSAIDs投薬歴のある方を除外し、腸管透過性の評価として、ラクチュロース/マンニトール比(LMR)を用いました。ジクロフェナクにより増加した腸管透過性は、ルビプロストン28日投与により有意に低下していました(P=0.049)が、血液中のエンドトキシンに有意な変化は認めませんでした。

 

解説:リーキーガット症候群は近年注目されている新しい症候群です。腸管粘膜のバリアーが破壊され、病原菌が体内に侵入することにより、腸管疾患(炎症性腸疾患、過敏性腸症候群)のみならず全身性の他の疾患(食物アレルギー、糖尿病、メタボリック症候群、脂肪肝、肝炎、膠原病、血栓症など)との関連が示唆されています。しかし、リーキーガット症候群の治療については現在のところ有効な薬剤は明らかにされていません。一方、非ステロイド性鎮痛剤(NSAIDs)は、腸管透過性を増加させることが知られています。このような背景のもとに本論文の研究が行われ、NSAIDsの一つであるジクロフェナク投与後に増加した腸管透過性をルビプロストンにより改善可能であることを示しています。ただし、有意差があると言ってもギリギリの数値(P=0.049)であり、対象も健常者ですので、実際にリーキーガット症候群の方を対象にした検討が必要です。

 

なお、ルビプロストン(アミティーザ)は、ClC-2クロライドイオンチャネル活性化作用、小腸内輸送改善作用、腸液分泌促進作用をもつ慢性便秘症の治療薬です。動物実験では、NSAIDsによる小腸損傷の修復作用が報告されています。

 

リーキーガット症候群については、下記の記事で紹介しています。

2018.4.10「☆子宮内フローラ検査について