モザイク胚の特徴は? | 松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

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本論文は、モザイク胚の特徴について検討したものです。

 

Fertil Steril 2018; 109: 867(カナダ)doi: 10.1016/j.fertnstert.2017.10.036

要約:2016〜2017年NGS法にてPGSを実施した378名(28〜47歳)において、448周期1547個の胚盤胞の分析結果を後方視的に解析しました。内訳は、正常胚643個(41.6%)、異常胚634個(40.9%)、モザイク胚270個(17.5%)でした。634個の異常胚のうち196個にモザイクが含まれていましたので、モザイク胚は466個(30.1%)に達します。モザイク胚の頻度は母胎年齢に依存せず、1個の染色体モザイクは17%、2個で5%、3個で3%、4個で4%と一定でした。染色体の異数性(モノそミーやトリソミー)は15,16,21,22番の染色体に多く認められましたが、モザイクは染色体の番号によらず均等でおよそ2.5%程度に見られました。モザイク胚の特徴として、染色体全体のモザイクはトリソミーに、染色体の部分モザイク(segmental mosaic)はモノそミーに有意に多く認めました。

 

解説:本論文は、染色体の異数性異常とモザイクは全く異なるパターンで認められることを示しています。この事実は染色体の異数性異常とモザイクが異なる機序でもたらされることを示唆します。特にモザイク胚は年齢依存性がありませんので、培養の過程で後天的に生じる現象あるいはアーティファクト(誤差)ではないかと推察されます。2018.4.6「☆PGSの真価は?」の記事でご紹介した論文③では「モザイク胚で妊娠継続しているものは、染色体の一部のモザイク(segmental mosaic)であり、segmental mosaic胚に限ると正常胚と比べ妊娠率も流産率も変わりません」ので、segmental mosaicそのものがアーティファクトである可能性があるかもしれません。モザイク胚の検討はまだ始まったばかりですので、今後の研究を待ちたいと思います。