☆ミオイノシトールの効能:メタアナリシス | 松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

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本論文は、体外受精におけるミオイノシトールの効能についてのメタアナリシスです。

 

Medicine 2017; 96(49): e8842(中国)doi: 10.1097/MD.0000000000008842

要約:体外受精におけるミオイノシトールの効能について2017年6月までに発表された7論文935名メタアナリシスを行いました(ランダム化試験6件、前方視的検討1件)。ミオイノシトール使用により、臨床妊娠率は1.45倍、良好胚(G1)は1.73倍に有意に増加し、流産率は0.26倍、未熟卵および変性卵は0.31倍に有意に減少し、使用した総HMG/FSH製剤量は327単位少なくなりました。使用量は1日4g、使用開始時期は3ヶ月前あるいは採卵周期開始時から、使用終了時期はトリガーまであるいは妊娠判定までとなっていました。

 

解説:イノシトールは、ビタミンB類似の物質であり、レシチン産生を促進し、糖質代謝と脂質代謝を調節しています。ヒドロキシ基の位置により 9種類の異性体がありますが、重要なのはミオイノシトールとD-カイロイノシトール(DCI)の2つです。ミオイノシトールは卵胞で産生され、DCIはミオイノシトールからエピマー化されて作られます。卵巣ではイノシトールがFSHシグナル、卵成熟、胚発生に重要な役割を演じていることが報告され、国際イノシトールコンセンサスミーティングで、体外受精におけるイノシトールサプリメントの有用性が提言され(N Engl J Med 1999; 340: 1314、Fertil Steril 2009; 91: 1750)、2015年にはやや推奨されています(Gynecol Endocrynol 2015; 31: 441、Eur J Obstet Gynecol Reprod Biol 2015; 195: 72)。また、イノシトールは細胞内情報伝達のセカンドメッセンジャーとして、膵臓の細胞機能にも大きく関与しています。従って、イノシトールはインスリン抵抗性の改善作用があり、耐糖能異常(糖尿病予備軍)、多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)、妊娠糖尿病の方に有効性が認められています。本論文は、体外受精におけるミオイノシトールの効能を示したメタアナリシスです。しかし、7論文の症例数は17〜165人であり比較的小規模な研究に留まっていますので、真の有効性を証明するためには大規模な前方視的検討が必要です。

 

下記の記事で紹介した論文は、本論文の7論文の一つです。

2017.5.3「☆ミオイノシトールの効能