嬉しい報告:死産を乗り越え妊娠、転座保因の妻37歳 | 松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

生殖医療に関する正しい知識を提供します。主に英語の論文をわかりやすく日本語で紹介します。

リプロダクションクリニック大阪・東京での採卵&移植を経て、現在妊娠18週となりました。羊水検査もクリアし、胎児染色体は正常核型でした!

妻32歳の時にタイミング法で第一子を妊娠、出産しました。妻34歳の時点でタイミング法で第二子を妊娠しましたが、この子がまさかの染色体に不均衡型転座を持つ胎児で、妊娠6ヶ月で死産となりました。同時に、妻(わたし)が均衡型転座保因者であることも分かりました。子どもを失うという、想像を絶する喪失体験に、途方にくれていたとき、松林先生のブログを通して質問をさせていただきました(2016.10.20「Q&A1249 均衡型転座の場合」)。『「諦めなければ十分に可能性はあります」とは、高度な医療も含めて出来ること全てを行った場合にのみ成り立ちます。(中略)本当に「2人の子どもを育てたい」のでしたら、ぜひステップアップをお勧めします。』

真摯なお答えに決心がつき、妻が36歳になってすぐに、ARTへステップアップしました。関東在住ですので、最初2回の採卵は、リプロ大阪までの遠距離通院でしたが、先生方のおかげで、決して不可能ではありませんでした。遠距離で迷われている方には、一度受診してご相談されることをおすすめします。採卵に先立ち、石川先生の男性外来で男性不妊を否定できたことで、あとは採卵をがんばるだけだと、肚をくくることができました。方針が変わることもあるため、採卵に先立ち男性不妊を診断していただくことはとても重要だと感じました。
 

1回目の採卵では、3個の胚盤胞を凍結することができました。この時、松林先生は「あなた方にはAよりもBの方法が合いますから、次はすべてBで行きましょう。そうしたら、胚盤胞が8個くらいできておかしくありません」と、夢のようなことを言っていただきました。しかし、それはまったく夢ではなく、その後は毎回10個前後の胚盤胞を得られたのです!びっくりいたしました。そして、ランダムスタート法のおかげで、この調子で半年間休みなく毎月採卵をすることができました。おかげさまで、現在37歳の転座保因者の割に、早く結果に結びついたものと思っています。

松林先生は、あまり感情をあらわになさいませんが、毎回の診察では、患者のことを考えて脳内をフル回転させてくださっているご様子を、ひしひしと感じます。採卵は毎回事前に決めたスケジュール通りの通院で職場に必要以上に迷惑をかけることもなく、連続して多数の凍結胚を確保できたため、スピードに乗って結果を出すことができました。北宅先生は、親身な目線で真剣に検討してくださる様子に、心より安心いたしました。おかげさまで、不安なく移植へ進むことができました。そして、リプロ東京では、竹内先生にたいへんお世話になりました。染色体に関しても非常に造詣が深くていらっしゃり、とても頼もしく感じました。また、「もう妊娠できないのではないかと思いました…」と弱音を吐いてしまった時には、「いえいえ、そんなことはありませんよ!」と、竹内先生が笑顔で力強く否定してくださったおかげで、不安を乗り越えることができました。土信田先生は、要所要所の上手なお声がけで、前向きにさせてくださいました。移植時には「妊娠って、非科学的なところもあるんですよ。だから、心配しすぎるのはよくありません。今回は大丈夫です。」と伺ったおかげで、ニュートラルな気持ちで過ごせたと思います。

特に思い出深いことは、1回目移植での陰性判定の次に受診した時に、松林先生が「(陰性判定を受けて)わたしもショックでした…。で、作戦を考えたんですけどね、次の移植では、こうしましょう。」と、真摯に次の作戦を考えてくださっていたことです!ご多忙な中、診察以外の時間にも患者一人ひとりの治療を考えてくださっているのかと、胸が熱くなりました。リプロのオーダーメイド治療とは、まさにこのことですね。おかげで、この次の移植で、順調に妊娠継続できています。また、1回目の移植陰性後にB-CEを再検査したところ陽性で、これを治療した直後の妊娠でもあります。もしB-CEがなければ、慢性子宮内膜炎のある子宮へ闇雲に移植し続けるしかなかったと思うと、ゾッとします。B-CE第一人者でいらっしゃる北宅先生に、心より感謝申し上げます。

第二子を死産したときは、まさかこのような希望に満ちた気持ちになれるとは思えず、もう二度と朝はこないものかとさえ思いました。しかし、ようやくわたしたち家族に朝が参りました。所謂「二人目不妊」に関しては、世間では「一人いるからいいじゃないか」という意見もあるかと思います。けれど、リプロの先生方、スタッフのみなさまは、一度たりとも「お子さんがいるからいいでしょう」という態度をなさいませんでした。感謝申し上げます。そして、リプロの「男女を」「エビデンスに基づいて」診るスタイルが、日本全国に広まりますよう、陰ながら応援しております。さらに、今後ぜひとも、リプロ式の婦人科オペ&周産期センター開設を、ご検討ください。我々の子どもの代へも「必要な時には、リプロへ行きなさい」と言えるように、貴院のいっそうのご発展をお祈りしております。先生方、スタッフの皆様におかれましては、ご多忙の中、どうか、お体にお気をつけください。

死産後の2年間はずっと、この「嬉しい報告」をお送りする​ことが、​夢でした。ここまで連れてきてくださり、ほんとうに、ありがとうございます。
 

コメント:道のりは長く、苦労や葛藤も多々あったと思いますが、いつも前向きな姿勢が感じられました。質問事項も簡潔にまとめておられ、私も答えやすかったと思います。私たちの医療がお役にたてて本当に嬉しい限りです。