本論文は、2013.9.5「培養液によって赤ちゃんの大きさが変わる」の続報です。
Hum Reprod 2018; 33: 1645(オランダ)doi: 10.1093/humrep/dey246
要約:2003~2006年に体外受精の新鮮胚移植によって単胎妊娠された方294名について、出生後のお子さんの成長の調査について同意の得られた135名を対象に9歳の時に検討しました。胚はVitrolife社(75名)あるいはCook社(61名)の培養液(2段階型培養液)です。有意差の見られた項目は下記の通り。
Vitrolife Cook P
体重 34.2kg 32.1kg 0.04
BMI 17.5 16.6 0.04
体幹脂肪 19.4mm 16.2mm 0.03
ウエスト 61.4cm 58.0cm 0.01
ウエスト/ヒップ比 0.86 0.83 0.02
心血管系、糖代謝、脂質代謝、甲状腺機能、血管内皮細胞機能、副腎機能の各種パラメータには違いは認めませんでした。
解説:これまで発表された論文では、妊娠8週および12週ではVitrolife社とCook社の培養液で胎児発育に有意差を認めませんが、妊娠20週では、Vitrolife社がCook社より胎児発育が有意に大きいと報告されています。本論文は、出生後のお子さんの成長にも培養液が影響することを示しています。ただし、有意差があると言っても0.05ギリギリであり、本当に有意と言って良いかについては何とも言えません。しかし、2012.11.8「☆妊娠中の栄養と出生児の健康:Barker仮説、DOHaD」に記載したように、妊娠中の低栄養状態が生後の生活習慣病の発症に関係するという概念、Barker仮説あるいはDOHaD (developmental origins of health and diseases)がありますので、胎児発育における培養環境の重要性を決して侮れないのかもしれません。
下記の記事を参照してください。
2016.10.13「培養液により妊娠率や赤ちゃんの体重に差が出る?」
2015.10.12「培養液により胚の遺伝子発現が変化」
2013.9.5「培養液によって赤ちゃんの大きさが変わる」