Q&A2643 出産1回、流産1回、以後妊娠しません | 松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

生殖医療に関する正しい知識を提供します。主に英語の論文をわかりやすく日本語で紹介します。

Q 第一子を29歳で出産し、第二子を31歳で妊娠しましたが、11週で稽留流産となりました。二回の妊娠は両方とも、子作りを始めて2、3ヶ月で自然妊娠しているので、ここまでは全く不妊ではなたっかと思います。
ところが、第二子流産後、1年の自己タイミング、3回の人工授精、1回の体外受精(初期胚移植)を行いましたが、未だ妊娠できずにいます。素人考えでは、流産とそれに伴う掻爬手術により、子宮の何かが変わり、妊娠できなくなった、と思えてなりません。

①流産後に不妊症になる、ということは、あるのでしょうか。あるとしたら、どのような理由でしょうか。
②掻爬手術の際に、子宮が細菌に感染した可能性があるのではないか、と思っているのですが、子宮鏡検査では、きれいな子宮だと言われました。子宮鏡検査では問題ないのに、慢性子宮内膜炎を発症している可能性はあるのでしょうか。
③流産後に、月経周期のいつもの流れがかなり変わり、着床期に生理痛が起きるようになりました。生理痛があるというのは、子宮が収縮している、ということなのでしょうか。
④他の不妊治療をやっている大手さんでは、子宮収縮検査はやっていない所も多いのですが、子宮収縮検査は意義のある検査なのでしょうか(子宮が収縮してたら妊娠しにくい、などの論文があるのでしょうか)。

本題からはそれますが、流産した胎児に染色体異常はなく、不育症検査を全て受けたところ、プロテインS活性が47%だったので、恐らく流産の原因はこれだと思います。

 

A 

①第2子不妊症も流産後の不妊症もあります。加齢による卵子の老化、慢性子宮内膜炎の発症、子宮内膜の変化、子宮収縮の変化、食生活の変化など、様々な要因が考えられます。
②子宮鏡検査では慢性子宮内膜炎の診断を確定することはできませんので、子宮鏡で見た目がきれいな子宮でも慢性子宮内膜炎を発症している可能性はあります。
③着床期の生理痛のような痛みが子宮収縮を示しているかどうかは、子宮収縮検査をしてみないとわかりません。
④子宮収縮検査がどの程度意義があるものかは今後の検討を待たねばなりませんが、当院のオプション検査を全て網羅した場合の妊娠率は70%程度あります。検査で陽性となる項目はほぼ均等ですので、子宮収縮検査もその他の検査と同様な重み付けであると考えています。

 

プロテインS活性低下も含め、不育症検査は原因ではなく「リスク因子」です。リスク因子があっても問題ない方もおられますが、うまくいかない方もおられます。なお、プロテインS活性低下の治療にはヘパリンが必要です。

 

なお、このQ&Aは、約2ヶ月前の質問にお答えしております。