☆自然周期ではトリガーすべきか? | 松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

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生殖医療に関する正しい知識を提供します。主に英語の論文をわかりやすく日本語で紹介します。

本論文は、自然周期ではトリガーすべきかに関する前方視的検討です。

 

Hum Reprod 2020; 35: 1073(ベルギー)

要約:2014〜2019年自然周期凍結融解胚移植を実施する方260名をランダムに2群に分け、hCGトリガー使用群と非使用群の妊娠成績を前方視的に検討しました。なお、day 3で凍結した胚を融解後1日培養しday 4で移植し、黄体ホルモン補充は一切しませんでした。また、臨床妊娠率は妊娠7週で評価し、妊娠継続率は妊娠10週で評価しました。スタート前に妊娠された方やhCGトリガー前にLHサージが生じてしまった方などを除外した妊娠成績は下記の通りで、全ての項目で有意差を認めませんでした。


ITT解析

      トリガーなし   トリガーあり

患者数        125       123

妊娠判定陽性率    36.8%      32.5%    

化学流産率      3.2%       3.2% 

臨床妊娠率      33.6%      29.3% 

子宮外妊娠率     1.6%        0% 

流産率        4.8%       4.9% 

妊娠継続率      27.2%      24.4% 

 

PP解析      トリガーなし   トリガーあり

患者数        110        63

妊娠判定陽性率    40.0%      42.9%    

化学流産率      3.6%       4.8% 

臨床妊娠率      36.4%      38.1% 

子宮外妊娠率     1.8%        0% 

流産率        5.5%       7.9% 

妊娠継続率      29.1%      30.2% 

 

しかし、トリガーありと比べトリガーなしで通院日数が3日多くなっていました。

 

解説:自然周期ではトリガーすべきか否かに関しては賛否両論あり、結論が出ていませんでした。本論文は、自然周期ではトリガーすべきかに関する前方視的検討を実施したものであり、どちらも妊娠成績は同等であることを示しています。ただし、トリガーありと比べトリガーなしで通院日数が3日多く必要ですので、時間に余裕がない方ではトリガーありが推奨されます。

 

下記の記事を参照してください。

2020.3.26「Q&A2515 ☆自然周期移植のトリガーは?