こんにちは、ともすけです。

ご無沙汰しております。ほぼ毎晩、信頼すべき愛すべきパートナーと楽しく知的興奮に満ちた会話を繰り返していて、その代わりブログを書く時間がないので長らく放置しておりました。これではいかん!ということでブログに会話で書き漏らしたことを書いていこうと思い、また書き始めることにしました。

 

 

精神分析で有名なジグムント・フロイト。

彼の鑑別診断について、松本卓也氏の『人はみな妄想する』を読んで考えてみました。

フロイトの理論のわかりやすいガイドは、

 

 

 

 

これ、シンプルなんですけど、ツボを押さえているいい本です。フロイトについて詳しい人でも(精神医学を学んだ人はたぶん別にして良いと思いますが)フロイトの用語をあまり理解しているとは思えない…僕はそう思っています。特に日本語に翻訳するとニュアンスが印象が変わっちゃうので、きちんとその用語をフロイトがどのように定義したかを見ていかなければなりません。

 

 

鑑別診断とは果たしてこの患者は神経症なのか、それとも精神病なのかというのを鑑別するということです。そういうシンプルな分け方は日本の精神医療ではされていないようですが、フロイトやラカンはそうしているということかな。

 

 

で、『人はみな妄想する』を読むと、フロイトの鑑別診断がどのように変わっていったかが書かれているのですが、僕はそれを読みましたがよくわかりませんでした。フロイトはその思索の過程において鑑別診断について考え方をいろいろ変えているのです。そのことについて詳しく書かれていた本は今まで読んだことはなかったなー。

 

 

でもね、読んでみると面白いのです。僕は臨床医でも臨床心理士でもないので思想として、たとえばある作家の神経症的兆候、精神病的兆候を読み取ることに面白みを感じています。「人はみな神経症である」とラカンは言ったらしいですが、この松本氏の本のタイトル「人はみな妄想する」というのは新しい鑑別診断の可能性を感じられて非常に興味をそそられます。ただ難しいのでなかなか先のページをめくることができません。

 

 

1894ー1896を区分けして、このときフロイトは防衛の種類による鑑別診断論を展開していきます。「防衛」・・・なんのことやらと思うと思いますがこういうところをしっかりと押さえていかないとあとあと何を言っているのかまったくわからん・・・ということになります。

 

 

まあ防衛のメカニズムから、神経症/精神病の鑑別診断を行おうということですね。1894ー1896の時点では「欲動」という言葉が使われていないようで別の説明のされ方をしているのかな。そもそもフロイトの鑑別診断の完成形がどのようなものか読んでいても素人なのでよくわからないのです。読んでいて非常に強いストレスを感じます。

 

 

防衛を説明するためには、いろいろ言葉の定義を知る必要がありますが、とりあえず適当に書きますw 心的装置というものが人間にはある。その記憶系に表象がやってきて結びつけられる。そこで結びついた表象を自我が受け入れないと強い情動を生み出す。それを防衛のメカニズムによって解決しようとする。ちなみにここで出てきた表象と情動を合わせて「欲動」というらしいです。

 

 

この防衛というのが科学的にどのような根拠があるのかは「防衛ー神経精神症」というフロイトの論文に書いてあるのかなー。全集にあたって確認していないのでそこはわかりません。彼女とこのことについて話したとき、証明できないものは信じないと言っていましたが信じないというのもありでしょう。フロイトはもともとが神経学者でありますし、症例をいくつか経験してきていますので、思いつきで防衛について書いているわけではないと思いますが。ラカンはきっと精神分析を科学とするために数学を使ったのでしょうね。

 

 

とんでもなく端折りますけど、神経症と精神病では防衛の働き方が違います。そこで鑑別するわけですが、神経症はその症状の原因がなんなのかよくわからないのが特徴でしょう。なぜなら転換や配転が起こり、表象がそのまま現れないからです。一方精神病では排除が起こるわけですが、表象と関連する表象がそのまま現れてくるのです。そういう意味で真実を語っているのは精神病者の方だということになるでしょう。

 

 

とまあ今回はこんな感じで終わりますが、この鑑別診断はドゥルーズとまったく考えを異にしているわけです。それはドゥルーズの精神分析批判の書とも言える『アンチ・オイディプス』という題名に現れているでしょう。しかし、それは過去のことであって、この『人はみな妄想する』という本はその見方を新たに書き換えることを目指しているようです。まあそのためにはまずフロイトの理解、そしてラカンの理解が必要なわけです。

 

 

精神分析は人間の思考のメカニズムの新たな見方を示したということで、このメカニズムを踏まえて文学作品などを読んでみると新しい発見があると思います。興味を持たれた方は上のリンクにある『フロイトの精神分析』はわかりやすいので入門書となりうると思います。