セルティック - レンジャーズ (2-1)

 ・・・中村俊輔がSPLの歴史に名を刻んだ

■前置き
勝ち点差 4 で首位を追うセルティック。
ただし、残り試合が2試合多いレンジャーズとは実質10の開きがある。
直接対決は残り2戦。
絶対に2連勝が必要な中でのホームでのグラスゴーダービー。
まさにSPL史上に残るであろう激戦の真っ只中での試合となった。

序盤から勝利を追うセルティックが攻勢に出る。
ロブソン、ハートリーといった守備的MFも攻撃に頻繁に絡み、両サイドバックも押し上げての攻撃は迫力十分であった。
ただ、守備の穴という意味では かなりリスキーな展開だとも言えた。


■前半総括
前半15分を過ぎたあたりからシュートを連発するセルティック。
そしてここ最近では無いくらいにパスがよく回り、サイドからの攻撃が機能していた。
中村もパス回しの中心として機能しており、レンジャーズがいつもよりプレスが弱い(引き分けでもほぼ優勝が決まるため消極的であった?)のを差し引いても、ほぼノーミスで軽やかに繋いでいく姿は華麗でさえあった。

そして20分。CKの連続でチャンスを量産し、一度自陣に戻されてからの素早いパスが右サイドから中央の中村俊輔へ…

ワンタッチで前へとトラップし、身体を押し出すように左足を蹴り上げる…
放たれたボールは、アウトサイドに強烈なスピンのかかったボールがGKの正面へと飛んでいく。

一瞬時間が止まったような空気のまま、魔法に掛けられたように急激にGKの逆へと曲がっていく・・・

まさに中村俊輔の技術が生んだ「マジック」によるゴール!

スコットランド中に 昨年のMVPが誰だったか?を思い出させるような強烈な先制ゴールであった…

そして前半はセルティックが圧倒的に攻めながら1-0で終了。
中村の貴重な貴重な先制ゴールであった。


■後半総括
奇跡の逆転優勝へ、、、後半が始まった。
メンバーの入れ替えは足を痛めたネイラーに変えてウィルソン。
元々レギュラー格の選手だが、右利きの選手を左サイドに配置という形になった。

前半の勢いそのままに攻勢に出るセルティック。
だが、マックギーディだけはレンジャーズのプレスの前に得意のドリブルが封じられていた。
ドリブルの方向を読まれ、数回止められてしまったために、かなり弱気になっていた。

そんな中、レンジャーズは【10番:ノヴォ】を投入。

彼が入ったとたん、前線での起点ができ、攻撃に厚みが増した。
そしてセルティックのクリアミスを拾ったレンジャーズの選手が前線でループ気味でのパスを通す。
ペナルティエリア内の右サイド、やや角度のない位置とは言え、フリーでボールを受けたノヴォは迷うことなく右足を一閃!

逆サイドへ低く鋭いシュートが突き刺さり、名手ボルツもお手上げの同点ゴールとなってしまった。

この辺りからセルティックは攻撃の形が作れなくなった。
サイド突破が得意なはずのマクギーディーは突破を諦め、ウィルソンへのパスが多くなり、苦しい体制からの利き足で無いセンタリングは精度を欠き、シュートまで至らない。

そんな中でまたも中村が魔法を魅せた。
右サイドまで流れたボールを受けた中村は、体制を整えて左足に持ち変える…
軽いステップから放たれたボールは強烈な弾道でゴール左上を捉える!

決まった!と思った瞬間に防いだのは なんと DFの手 だった…

一発レッドカードをPKを得たセルティック。
勝利は決まった、、、かに思えた。

だが、このPKをマクドナルドが失敗!
足を痛めていたGKの決死のセーブで、レンジャーズが同点を死守する。

ここから試合は緊迫したものとなった。
互いに譲れない戦い。
勝利が必要なセルティックは攻めるものの焦ってしまい形が作れない。

ストラカン監督は交代のカードを切った。
それは FWサマラスの投入。
前線での起点、長身FWへセリンクの運動量の低下による交代か?
PK失敗を引きずるマクドナルドとの交代か?

しかし、ここで見せた采配は 守備的MFロブソンとの交代であった。
試したことのないはずの3TOP。
そして ロングボールでの攻撃・・・
勝利のためになりふり構わない姿勢は胸を打つものがあった。

だが、ことごとく全てのシュートが枠を外れていく。
呪いにかかったようにレンジャーズのゴールは遠く感じた…

そして迎えた後半ロスタイム・・・絶望的かと思われた そのとき
DFコルドウェルが中央をオーバーラップ。
前線から落とされたボールを拾ってセンタリング。

試合展開とあまりにアンマッチな緩やかなクロスが放物線を描いてファーに居たマクドナルドの頭へ。
角度の無いところからヘディングで折りかえしたボールに飛び込んだのはVOヘッセリンク!

最後の最後の最期の最期で 劇的な決勝ゴールが生まれ、セルティックが勝利を収めた。


■選手総評
GK
ボルツ 6.0  いつも通りの安定感
目だったミスもなく、安定したセーブ、ファインセーブを見せた。
失点は相手を褒めるべき。

DF
ネイラー 4.5 怪我は不運も…
怪我は不運だったが、全体的に消化不良。
勝利に貢献したとは言えず

コルドウェル 6.5 勇気ある攻撃参加
幾度ものセンタリングを防ぎ、最後には攻撃参加して決勝点の基点となった。
守備でも身体を張って、不満はなし

マクマナス 6.0 安定した守備
1対1には相変わらず強いところを見せた。
中盤が上がり気味だったため、カバーは難しかったが、最後の砦として機能

ヒンケル 5.5 攻撃に不満も
守備では破綻なく。いつもより攻撃参加が少なかったが、中村がキレキレだったため、自重していた感も。

ウィルソン 5.5 無難な出来
途中出場では無難な出来。慣れない左サイドでセンタリングの精度は若干おちたか。マックギーディーが悪かったため煽りを受けた感もある。

MF
ハートリー 6.0 攻守に奮闘
激しいプレスと安定したパス回しで貢献。
最後まで運動量は落ちなかった。

ロブソン 6.0 まずまず・・・
守備的MFとしては危険なプレー(技術に頼ったキープ)があったが、全体的には無難な出来。セットプレーでは脅威となった。

マックギーディー 3.0 突破出来ず 弱気なプレー
ドリブルが完全に読まれていた。後半はウィルソンに回すばかりで消極プレーに終始。最後まで波に乗り切れなかった。

中村 8.0 殊勲のゴール
まさに値千金の先制ゴール、試合を作るパス回し。
後半にはPKと退場を誘うシュートと獅子奮迅の活躍ぶり。
初めてダービーで存在感を見せつけた。
語り草になりえるスーパーゴール。

FW
マクドナルド 5.5 出来は悪くないものの…
PK失敗は下手したら戦犯もの。
全体的に悪くはないもののシュートはことごとく枠に嫌われた。
最後のアシストは見事な意地。

VOヘッセリンク 7.0 ゴールのみ。だがそれで良し
運動量はやや陰りが見え、前線でのキープもそれほど、、だったが
こんな試合ではゴールこそ全てな部分もある。
間違いなくもっとも重要なゴールをもっとも重要な時間に決めた。

サマラス 5.5 前線の起点に
途中出場ながら活発な運動量で前線に余裕をもたらした。
直接はからまなかったものの、最後のゴールは彼の落としから始まっている。


監督
ストラカン 8.0 完璧な仕事
この試合のみを評価するならば完璧な仕事をしたと言って良い。
試合の入り方、後半追いつかれてからの選手交代。
特にPK失敗のマクドナルドを残したのは見事な策。
彼の意地と3トップにしたことによるロングボールの有効性が最後に生きた。

怪我人や出場停止を抱えながら、宿敵レンジャーズを見事に打ち破ってみせた。


■奇跡へ
残り数試合。レンジャーズとの試合に勝利すれば、かなり奇跡の逆転優勝が見えてくる。
マジックを見せた中村とマックギーディーの復活が鍵となるだろう。
FW陣は好調とは言えないが、結果は残している。

疲労のたまるシーズン終盤。
最後の力を振り絞った凄まじい激闘が期待できそうである。