就活「内定」シリーズ、第3弾。

実は、郁の「内定通知書」には、「内定職種」が明確に記載されています。夏のインターシップも、その職種のコースに参加していたので、当たり前といえば当たり前なんですけど、もしかして、これは「ジョブ型採用」?! 

最近、よく聞く「ジョブ型採用(雇用)」、25卒生の8割が興味を持っているという調査結果もあります。というわけで、今回のお題は「ジョブ型採用(雇用)」です。

 

ジョブ型とは、求職者が企業における特定の職務内容、つまり職種(=ジョブ)に応募し、入社した場合は原則その職種で働き続ける形態です。雇用契約にも職務を明確化した記述(ジョブ・ディスクリプション)があり、年齢や経験年数によって報酬を決めるのではなく、職務内容やポジションによって報酬が設定されます。欧米で一般的に普及している採用方法です。

それに対して、日本で従来から行われている採用方法は「メンバーシップ型」と呼ばれています。新卒の応募段階では総合職・一般職といった大まかな区別しかなく、その職務内容は必ずしも明確ではありません。これが、「配属ガチャ」の原因となります。また、初任給は担当業務を越えてほぼ一律になりがちなのも特徴と言われています。

 

ジョブ型雇用のメリットとしては、次のようなことがあります。

  • 自分の得意分野に特化して、能力を十分に発揮でき、特定の業務のみを実施することで、専門性やスキルがさらに高まる
  • 成果が評価に直結するため、モチベーション向上にもつながる

そして、それを裏返すと、そのままデメリットになります。

  • 職務内容と求めるスキルを限定して採用する雇用形態のため、入社後に、事業の撤退などの何らかの事情で担当職務がなくなった場合や、自らのスキルが企業の要求する水準に達しないと評価された場合には、他部署への異動が難しく、最終的に離職せざるを得ない場合が生じる可能性がある
  • 専門性への企業の期待が高いため、研修やセミナーを主体的に受けるなど、常に最新の知見と技術を身につけるための自己研鑽が負担である

出典:三井住友銀行 Business Navi ~ビジネスに役立つ情報~ 人事に関する記事 ジョブ型雇用とは?従来の雇用との違いやメリット・デメリットを紹介(2022/12/28)

 

 

さて、郁の場合、文系なので、特別な技術や資格を持っているわけではありません。ただ、採用された職種も特に資格がないとできないというものではありません。採用する側としては、採用選考の過程を通して、この職種として働くための基礎的な力がある、この職種に向いている素養があると判断したということなのでしょうか。郁の話を聞く限り、そこで頑張れば、専門性を高められるらしい。

ちなみに、日本企業だと、採用時の賃金は学部卒より修士修了の方が高く設定されているのが一般的ですが、郁の場合はありません。新卒採用の場合、実際の仕事上の実力はわかりません。だからなのか、学歴に関係なく職種・職階で賃金は同じなのだそうです(学部卒より院修了の方が優秀とは限らないことは、インターシップの経験からも明らか)。そして、その先は、本人の能力と実績で変わってきます。研修への参加や資格取得に関しても、本人次第らしい・・・。

 

う~ん、これって、しっかり「ジョブ型採用」ですね。

外資系の「UP or OUT(昇進か辞めるか)」は、 実は「Grow or Out(成長するか、辞めるか)」 なのだと宮原氏は書いています。この企業のこの職種でやっていけるかどうかは、郁の今後のGrowにかかっているということです。もちろん、日本企業でも同じなのだと思いますが、「ジョブ型採用(雇用)」の方が、Growの程度が見えやすい分、シビアに評価されそうな気がします。

外資系だけでなく日本企業でも進められている「ジョブ型採用(雇用)」。母としては、昔の(?)「年功序列制」が懐かしい・・・^_^;。

 

 

参考:

外資就活HP;ジョブ型とメンバーシップ型の違いは?(2022.03.15)

宮原伸生;外資系の「アップ・オア・アウト」は、本当は違う意味じゃないのか?,キャリア・スキル 外資系で自分らしく働ける人に一番大切なこと,Diamond Online,

 

 

郁は内定通知と一緒に「労働条件通知書」を受け取りました。ということで、今日のお題は「労働条件通知書」。

 

「労働条件通知書」は、採用後の労働条件を記載した書類です。労働条件は、労働基準法(第15条)で労働契約を結ぶ前に明示することが義務付けられていています(書面、もしくは書面に印刷できる形で交付する:施行規則第5条)。また、第15条第2項には、実際に働き始めてからの労働条件が事前に明示されたものと異なる場合、労働者は、労働契約を解除することができるとされています。

後でトラブルにならないようにするためには、自分自身が内定時に提示された「労働条件通知書」の内容をよく確認し、納得した上で労働契約を結ぶことが必要ということです。入社後に「こんなはずではなかった」「聞いていた話と違う」と訴えても、「労働条件通知書」にそのことが記載されていなければ、そこまでですから・・・。

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労働基準法 第十五条 
 使用者は、労働契約の締結に際し、労働者に対して賃金、労働時間その他の労働条件を明示しなければならない。この場合において、賃金及び労働時間に関する事項その他の厚生労働省令で定める事項については、厚生労働省令で定める方法により明示しなければならない。
2.前項の規定によつて明示された労働条件が事実と相違する場合においては、労働者は、即時に労働契約を解除することができる。
3.前項の場合、就業のために住居を変更した労働者が、契約解除の日から十四日以内に帰郷する場合においては、使用者は、必要な旅費を負担しなければならない。
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さて、「労働条件通知書に」には、どんな労働条件が記載されているのでしょうか。
 

労働基準法(施行規則)で必ず明示しなければならないとされている労働条件の項目

  1. 契約期間に関すること。
  2. 期間の定めがある契約を更新する場合の基準に関すること
  3. 就業場所、従事する業務に関すること
  4. 始業・就業時刻、休憩、休日などに関すること
  5. 賃金の決定方法、支払時期などに関すること 
  6. 退職に関すること(解雇の事由を含む)
  7. 昇給に関すること

条件の定めがある場合には必ず明示しなければならないとされている項目

  1. 退職手当に関すること
  2. 賞与などに関すること
  3. 食費、作業用品などの負担に関すること
  4. 安全衛生に関すること
  5. 職業訓練に関すること
  6. 災害補償などに関すること
  7. 表彰や制裁に関すること
  8. 休職に関すること
ちなみに、郁の「労働条件通知書」に記載されていた内容は、

①入社日 ②契約期間 ③就業場所 ④従事すべき業務の内容 ⑤始業、終業の時間、休憩時間、所定労働時間外労働の有無に関する事項 ⑥休日 ⑦休暇 ⑧賃金(昇給に関する記載を含む) ⑨退職に関する事項 ⑩福利厚生 ⑪試用期間 

でした。(当たり前ですが)法律で明示すべき内容は、全て記載されていました。

まあ、問題はその中身ですけど・・・^_^;。

 

ただ、「ブラック」と言われている企業でも、「労働条件通知書」からは、そんなことはわからないようになっているのでしょうね。ホントのところは、働いてみないとわからないのかもしれません。法的には、条件が違えば労働契約を解除できるとなっていますが、解除したあと、つまり、退職したあとは、再び自分で就活することになります。

やはり、雇用契約を結ぶ前にホントの職場の状況や働き方について情報を得ることができるといいのですが、就活で出会う社員の方たちは本音で話してくれているのか・・・、ネットに出回っている口コミはどこまで正しいのか・・・、いろいろ考えても難しいです。

最終的には、インターシップや選考過程、その後の面談等の雰囲気や内容から自分自身で判断するしかありません。そのためにも、就活期間中は、意識して自分自身でしっかりアンテナを立てて臨んでおくことが必要そうです。

さてさて、郁のアンテナの感度は大丈夫かな・・・(^^;

 

 

追記:令和6年4月から労働条件明示のルールが一部改正されます(無期転換ルール及び労働契約関係の明確化)。詳細が知りたい方は、厚労省のHPでご確認ください。

 

参考:

e-GOV 法令検索「労働基準法 第十五条」

Uターン転職A toZ;内定承諾する前に!労働証券通知書をもらったら確認すべきポイント

人事労務Q&A;内定通知書と労働条件通知書の違いは?出すタイミングや注意点まで解説

 

まだまだ続く就活シリーズ。今回の話題は、就活生が目指している「内定」。母的には「内定=就職先確保」って感じなのですが、そもそも、「内定」ってどういう状態なのでしょうか?

 

「内定」とは、法的(判例的)には「始期付解約権留保付労働契約」であるとされています。「始期付解約権留保付労働契約」とは、「労働契約の始期(通常は入社日)までは、企業と求職者のそれぞれが解約権を留保するというかたちの特別な労働契約をいいます。原則として労働契約が成立しているが、特別な事情が発生した場合には入社日前の内定取り消し(または辞退)が可能になるというもの」なのだそうです。

 

「原則として労働契約が成立している」ということなので、学生から見れば採用は確約されていると解釈できます。ただ、通常は、企業が学生に対して「内定通知」を行い、学生がそれに対して「承諾書」を提出することで労働契約が成立することになります。つまり、「内定通知」をもらっても、期限までに「承諾書」を提出しなければ、内定の効力は生じないということになります(内定辞退とみなされる?)。

「内定」もらって舞い上がりすぎて、「承諾書」の提出を忘れると、悲劇が・・・。

ちゃんと、落ち着いて「内定通知書」をしっかり読むことが大切ってことですね。

 

「承諾書」が企業に受理されると、「(始期付解約権留保付)労働契約」が成立。企業にも学生にも法的な拘束力が発生し、企業側は、簡単には「内定取り消し」はできません。
一般的には、次のようなことが挙げられています。

・応募者が卒業単位不足などで卒業できなかった場合 

・応募者が病気やケガなどで働けない状態となった場合

 ・応募者に犯罪行為があった場合 

・企業の業績悪化など経営上やむを得ない場合 

・応募者が経歴詐称をした場合、等

(出典:マイナビ2025 知っておきたい!就活関連基礎用語 内定・内々定とは?)

 

郁がもらった「内定通知書」にも、きちんと「内定を取り消す」条件が書かれていました。

郁が内定をもらった企業の採用選考自体は大卒予定で受けることができるのですが、郁は採用選考を「大学院修了予定」で受けているので、修士を修了できなければ、たとえ大卒資格はあっても採用はしないということが明確に記載されていました。ここ重要ですよね。後で、トラブルにならないために、一つ一つ丁寧に記述されていました。

 

「内定取り消し」は、「解雇」と同様なので、その条件は厳しいです。しかし、学生の「内定辞退」は、簡単に(?)できます。「内定辞退」は、「退職の申し出(雇用解約の申し入れ)」と同じと考えられるので、民法上では「いつでも解約の申入れをすることができる」とされていて、この場合の雇用契約は「解約の申入れの日から2週間を経過することによって終了」します。つまり、法律上は入社の2週間前までであれば、いつでも内定辞退が可能であり、内定承諾書を提出した後であっても同じということになります。とはいえ、「内定辞退」されれば、企業側としては、採用予定人員を下回る可能性もあり、新年度からの業務に支障をきたす可能性も・・・。

法的には、労働者側が守られているとはいえ、入社意思のない企業の内定を早めに内定辞退することは、学生としての最低限のマナーだと感じました。

 

ちなみに、大学入試の場合、募集定員よりも多くの合格者が出ます。それは、合格者の中には入学辞退をする人がある一定数いることを前提に合格者(数)を決めているからです。そこの読みを間違えると、入学者が定員を割ったり、逆に定員を大幅に超過する可能性が・・・。定員を割った場合には、補欠者を合格者に繰り上げることで補うこともできますが、超過してしまった場合には、そのまま受け入れるしかありません・・・。

郁は、面接で、他にどこのインターシップに行ったかを聞かれたことがあったようでした。もしかしたら、企業も内定辞退率を考慮しながら、内定者数を決めているのかもしれませんね。

 

 

参考:

ベンナビ労働問題HP:労務問題 内定通知書とはどんな書類?法的効力や通知後にとるべき行動を徹底解説

マイナビ2025:就活準備 知っておきたい!就活関連基礎用語 内定・内々定とは?

 

 

 

就活の相手は、基本的には「企業」です。
では、日本に「企業」はどれくらいあるでしょうか。そんなことが気になって、調べてみました。
今回のネタ元は、令和5年6月に総務省・経済産業省から公表された「令和3年経済センサス・活動調査」です(データは2021年6月1日現在のもの)。

そもそも、「企業」とは何か・・・。
デジタル大辞泉によると、「営利を目的として、継続的に生産・販売・サービスなどの経済活動を営む組織体。また、その事業。資本主義経済のもとでは、ふつう、私企業をさす。」とされています。調査では、「企業等」とされていて、「事業・活動を行う法人(海外の会社を除く)及び個人経営の事業所」で、同一の経営者が複数の事業所を経営している場合は、それらはまとめて一つの「企業等」となるとされています。また、外資系企業も日本国内で法人を作っていれば、この調査の「企業」には含まれるようです。データを見る上では、「企業」は就職する場、「事業所」は実際に働く場と考えることができそうです。

さて、この調査によると、日本の企業等の数は368万4049企業(そのうちの9割は単一事業所企業)、(民営)事業所数は515万6063事業所です。なんと多くの企業があることか・・・。当たり前のことですが、商品や企業広告等で名前を知っている企業はほんのほんの一部に過ぎないということを、あらためて実感します。もちろん、これらのすべての企業が新卒の採用募集を行っているわけではないのですが。

 

ちなみに、就職情報サイトで検索可能な企業数(2023年11月6日現在)は、マイナビ2025で3万2124社、リクナビ2025で1万99840社でした。マイナビ2025で検索できる企業は、日本の全企業のうちの約1%でしたが、それでも、すべての企業情報にアクセスするには多すぎる数です。

 

自分に合った企業に就職するための第一歩は、まずは、そんな企業に出会うことですが、こんなたくさんの企業の中から見つけるのは大変そう・・・。「合同企業説明会」とかで、今まで全く知らなかった企業に出会えることもあるのかもしれませんが、基本的には、自分自身の業界(企業・職種)研究の力、そして情報収集力にかかっているということになのでしょうか。
郁と同年代の子を持つブログのお友だちが、就活を「就活そのものの単位が欲しいくらいの知識と活動」と表現されていたのですが、ホントにそう思います。

 

郁とは離れているので、直接は見ていないのですが、ここまで、就活にどれだけの時間をかけてきたのか・・・、話の端々から、相当の努力を重ねてきたことが、推察されます。こんなにいっぱいある企業の中から、「ここで、働きたい」と思える企業を見つけ、エントリーし、インターン選考を通過、インターンに参加。そして、早期選考の次のステップに・・・。

半年以上頑張ってきた郁の就活は、もうすぐ終わりを迎えそうです。

 

 

 

※ここに示したデータは民間企業のものです。国及び地方公共団体の事業所については、別途報告が出ています。


参考資料
総務省・経済産業省:令和3年経済センサス・活動調査 産業横断的集計(事業所に関する集計・企業等に関する集計)結果の概要,令和5年6月27日