モンゴルだるま@ウランバートルです。

モンゴルでのエコツーリズムの推進のために10年間を費やしてきました。
そのわりに、なっかなか波には乗れずあがいている零細企業なのがちょっと哀しいけどw

そんな私が起業する直前、あるいは某ドキュメンタリー番組制作会社を契約満了に伴い飛び出したはいいが宙ぶらりんだった頃の私に即座に声をかけてくださったのが報道ジャーナリスト集団「ジンネット」社長の高世仁さんでした。

日本に帰るたびに、面白い取材ネタでわらかしてくれたり、美味しいお酒や料理をご馳走になったりとお世話になりっぱなしです。

その高世さんから、メールをいただきました。

"チェルノブイリ取材をYouTubeに5本シリーズでアップしました。広めていただければ幸いです
http://t.co/pWU5Bs5"


ツイッターのDMなので、とても簡潔ですが、この拡散希望のメッセージに込められた高世さんのなみなみならぬ決意を感じました。



取材時期は2011年4月7日から11日。チェルノブイリの原発事故による放射線被曝をした現地にくらす人たちは、驚くほど早くフクシマの原発事故の惨事・津波や大震災による被災の状況をキャッチしていたそうです。チェルノブイリの事故後、被曝し原爆症に苦しむ人たちに手を差し伸べ、現地復興をサポートしていた日本のNPO団体が事故直後から現在にいたるまで活動を続けていたということもあって、チェルノブイリの人たちは、皆さん、今回の日本の震災とフクシマ原発事故による被曝地拡大に心を痛め、復興を祈ってくれていたそうです。

ジン・ネットという制作会社は、今はなき「サンデープロジェクト」の特集コーナーや「報道特集」などで北朝鮮関連の拉致問題や朝銀破綻の真相を暴いたり、北朝鮮からの不審船の領海侵犯・撃沈時の工作活動の徹底検証などでスクープ物・放送業界のタブーにつっこんだネタなどを得意とする、本気の報道番組制作会社です。
このジンネットでのお仕事はハードなんだけど、修羅場を潜り抜けた人たちだけが発するユーモアやウィットが満ち溢れた職場で、私にとっては、日本一愛着のある制作会社であります。

3月11日に日本列島の半分以上を揺るがし、「絶対安全」といわれていた原子力発電所が「想定外」の事故で震災後3ヶ月近くがたとうとした今でも、全然「大丈夫」な状態になっていない。

「日本はほんとに大丈夫なのか?」ということを検証するために、原発事故として30年近くがたった今でも記憶に新しいチェルノブイリの原発事故現場に取材に出向いた高世さんの映像です。

普通の映像制作会社はいわゆるテレビ局の「下請け」会社です。
番組枠の番組を制作し、その制作費をテレビ局からいただくことでお仕事が成立します。
大抵のテレビ制作会社は番組枠が確定し、テレビ局からいただける制作費が決まった時点で取材に行きます。
最近は、制作費もどんどん削られ、取材期間は短くなり、編集作業は過酷になり、もはや突貫工事みたいなものばかり。
宣伝広告をかねたタイアップのため、日本国内のお店の食べ歩きだったり、電車旅行だったり、温泉番組だったり、たくさんの芸人さんが集まったバラエティだったりと、とにかく取材費が安い番組ばかりが地上波で垂れ流しになってるんだから、面白くなくたって、知的好奇心の真髄をゆさぶる作品がなくたって仕方ない。

テレビが面白くないっていう話は、さも、ありなん、なのです。

そんな状況の中で、ジン・ネットは、「報道価値がある」ネタを自分たちで探し出し、先行投資で徹底的に独自取材をし、その成果である映像素材を、テレビ局の報道枠に「売る」あるいは「貸す」といういわゆる通信社的な役割も果たしているのです。

徹底取材といういわゆるジャーナリスト、といったときに多くの人がイメージする「自分の足と耳と目で稼ぐ」取材をアシスタントの人たちも新人当時から徹底的に仕込まれるので、「ガイアの夜明け」とか「情熱大陸」「素敵な宇宙船地球号」「NHK特集」などの番組制作もできるとても有能な取材者集団なのです。

今回のチェルノブイリ取材も、震災まもなく、社長でディレクター・プロデューサーもやっている「危ない取材を一手に引き受ける」高世さんが現地に飛んで行いました。

取材のあとのツイッターでのやりとりで、私は、イメージ先行のチェルノブイリ・フクシマの実態を日本の視聴者さんに伝える、すごい貴重な取材になるって実感していました。

でも、どうもよくある「大人の諸事情」にひっかかって民放も、日の丸親方に首根っこをおさえられているNHKも、「やばそう」な映像は扱えない、とどうも弱腰で、せっかくの取材が生かせないまま、現在に至る、という状況になってしまいました。

映像素材もちゃんと編集され、まとまっているにも関わらず、「世論が騒ぐかも」とか「スポンサーがつかないかも」ってことで報道されないのです。

日本にいる皆さんが、今、一番知りたいであろう、「フクシマ原発の事故後の日本は、今後どうなっていくんだろう?」ということを検証した作品が、なんとまだ起こってもいない「大人の事情による混乱」への配慮によってお蔵入りになっちゃってるのです。

プロのドキュメンタリー制作をしている人が、今までの取材費は全部制作会社の自腹となる、という状況でテロップまで入れた状態での動画作品をYouTubeでホントに完全無料で流す、ということがどういうことであるか?

報道ジャーナリストとして、視聴者の皆さんに「伝える使命」がある、という信念の表れです。
私利私欲の全てを捨てて、本気で原発の実態を皆さんに訴えようとしているのです。

正直、ジンネットの取材先行投資型は、今の日本の映像業界ではほとんど「自殺行為」というか「やってけないでしょ」ということで、多くの報道ジャーナリストが諦めてしまった取材のやり方だと思います。

でも、この取材姿勢は、日本のジャーナリズムの最後の良心だと私は思っています。

がんばろう、ニッポン! がんばろう、ふくしま!
がんばろう、ジンネット!そして、ありがとう。
私はジンネットに関われていること、ホントに誇りに思い、また真実に向き合うことの大切さを感じる機会を与えていただけたことを感謝しています。

そして、ホンモノのジャーナリスト集団であるジンネットが、実力発揮できる仕事の場がどんどん開拓されることを期待しています。

今の日本は、3月10日までの日本とは違います。決して楽観はできないからこそ、国内外、全ての日本人が、日本を愛し、日本と関わってきてくれた人たち全てが力を合わせて、真実を見つめ、この試練に立ち向かうときなんだって、感じています。

あきらめずにずっと耐えてきているウクライナの人たちも応援してくれています。
真実を報道することに命がけなジンネット、今後も応援してください。