モンゴルだるま@ウランバートルでお仕事中、です。

なんとなく、モンゴルで心地よく、というかストレス最小限で働くためには、モンゴル人にとっても、自分にとってもムリのないペースでの時間配分が大事って思う今日この頃です。

緯度が高いモンゴルでは、夏の1日は感覚的に日本よりかなり長いです。

1日は24時間なのは世界中どこも同じなのですが、太陽がサンサンと降り注いでいるだけで、なんとなく1日が長く感じるのです。

つまりは自分にとっての1日はお日様が出ている間に重点があり、暗くなってしまえば、なんとなく寝るだけーって感じなのです。
草原での暮らしだと、特にパソコンもネットも禁止!(せっかくモデム導入したのに・・・グスン)
今は、ベースキャンプから数km先のプチブルな遊牧民のところに押しかけないとテレビも見れません。
だから明るいうちにノンビリしたり、アクセク働いたりをメリハリきかせてたっぷりやるのがモンゴルの草原の暮らしです。

1日にできる仕事ってルーティーンな家畜の世話作業以外にはわりと少ないのですね。

都会でも夏のモンゴルって人に会ったりする仕事ってなかなかはかどらない。
国家公務員でもわりとケロリンパと21日間とか45日間(1ヶ月半!)もの夏の公休をとってるケースもあり、しかも仕事の引継ぎなんかせずに1人で抱え込んでバケーションに行っちゃったりするとね・・・
そりゃ、有給休暇は働く人の当然の権利なわけですが、普通は、その個人の権利と同じくらい公務が滞りなく遂行されるように何かしらの対応とかとってくれるもんだと思うけど、ここはモンゴルですものね。

公務には、多分、汚職・賄賂撲滅といいつつも、それなりに美味しいオプショナルな特権がくっついていて、その特権をむざむざ誰かさん(それが仲のよい同僚であっても)とシェアしたくないっていうことなのか?なんていぶかしんでしまう。

連休明けでちゃんと皆仕事に戻ってくれるのかなーと思ってたのですが、ちゃんと戻ってきてました。
おかげで昨日、かなりのTo DO listがこなせたのです。
逆に言うと、1週間くらいのブランクは腹をくくってタップリ休んじゃってもいいのだなぁ、ってことか。

都会の暮らしは土日の週休二日制とか残業手当とかって結構、被雇用者(働く人たち)の権利がかなり手厚く保護された労働基準法に守られているわけですが、自営業=自給自足生活の基盤である遊牧業は、365日年中無休だし、場合によっては、24時間働けますか?となることも大地の母のご機嫌次第でありうるのです。

一見、ノンビリ、まったりに見える遊牧民の暮らしも、その中に入ってみると、それなりなリズムがせわしなく刻まれているのですね、特に夏は。

今月前半に1週間余りをかけて、遠路はるばる馬群を調達してきたので、家畜にかかわる作業が増えました。
馬の買い付けにかかった資金もそれなりでしたが、さらに維持管理にかかる道具類とか委託牧民との契約とか、今後も結構コストはかかるのです。
とはいえ、ワクワク!

去年、乗用馬を購入したときもワクワクでしたが、今回は、乗馬をするとか羊や山羊の放牧が楽チンになる、とかいうだけでなく、馬を増やすという楽しみもあり、さらに自家製の馬乳酒(アイラグ)を作ったり、飲んだりできるという楽しみがあるのです。

今は子馬は3頭しかいないので母馬3頭の乳搾りだけなので、ものの30分程度で済みます。
とはいえ朝7時に子馬を捕まえてゼルというつなぎ紐につなぎ、8時くらいから2時間おきに乳搾りの作業が夜9時くらいまで、つまりは約6回行われるのです。

となると乳搾りが30分程度で終わるにせよ、次の作業まで2時間くらいで他の作業をこなさねばなりません。
2時間くらいで半径5-10kmくらいのところで放牧している羊や山羊の群の様子をチェックしたり、場合によっては別の場所に移動させたり、馬具とかそのほかの作業用の道具を作ったり修繕したりします。

さらに乳製品作りをしたり、子供の世話をしたり、お茶を作ったり、来客があればそのおもてなしなど家事はいっぱい。

でも、そんなにアクセク、せかせかした印象を受けることもなく、モンゴル人遊牧民の女性たちは、ゆったりと、ほがらかに日々の家事をこなしています。

私にとっては子馬を捕まえることも、母馬に足かせをかけることも、馬の乳搾りをすることも、馬に乗ることさえ、日常であっても、いちいち感動いっぱいなエキサイティングなイベントです。

特に今日は何をやろう、なんて予定をたてて動いているわけではなく、なんとなく急に、「じゃ、これやろうか」といきなり大掛かりな工事とか作業が始まったりするので夏の草原の暮らしってサプライズだらけです。

あとは、モンゴル暦の日和などをみて、毛刈りとか貯水池や建物の基礎作りや薪づくりとか屠殺や家畜の調教、売買、散発、民族服のデール作り、フェルト作りなどが行われます。

ご近所さんで持ち回りで共同作業を行うので、夏は結構まばらに暮らしているとはいえご近所づきあいが多いんですね。

ご近所づきあいといえば男の人たちは、放牧の合間にあちこちのご近所さんのところを訪ね歩いては、馬乳酒やミルクティーや乳製品などを遠慮なく飲み食いしています。
最近は乳製品やミルクは貴重な収入源となっておりますが、以前は「天と大地の恵みである乳製品は惜しみなく分け合うもの」とされていて、草原で売買するなんて水臭いことは「恥ずかしい」とされていました。今でも、どこかの遊牧民の家庭に立ち寄れば、お土産にヨーグルトの酒粕=アーロールや牛乳の湯葉=ウルムなどをたっぷり持たせてくれます。販売用のアイラグとは別に、お客様用にたっぷりふるまってくれます。

そんなわけで乳製品や馬乳酒はいくら作っても作りすぎるということはないのです。

乳製品にしても馬乳酒にしても、人の手が直接かかるのは長くても30分から1時間程度。
あとは、重力とか酵母発酵とか自然の力を借りてゆっくり時間をかけて完成させます。

うまいこと時間と作業がはまるんですね。
これも悠久の歴史の中ではぐくまれた遊牧文化の生活ペースなんだろうなぁ。

お客さんやフィールドワーカーとして遊牧民の暮らしを見つめていたときには、あんまりピンとは来ていなかった生活のリズムですが、自分の財産であり家族であり労働の一部として草原の暮らしに身をおいて、モンゴルのスローライフの素敵なところを実感できるようになっています。

都会の人も草原の人も、働く、ということに対して、あんまり時間に追われて慌てたり、テンパったりしないのは、こういう人間の力=内的要因と自然や社会の力=外的要因の両方によって、世の中が回ってるっていう意識があるからなのかもしれません。

とはいえ、都会で働いているときは、もうちょっと人間の力でなんとかしようってがむしゃらになって欲しいなぁ、って思うんだけど。

いずれにせよ、半年以上続く、暗く寒い冬を前に、たっぷり休んで、たっぷり働き、夏を満喫しなくちゃ、ね。