エンターブレイン(2006/11)刊 「イビチャ・オシムの真実」。

欧州での監督時代に出版されたイビチャ・オシムの自伝。
海外で出版されていた内容に、ジェフ~日本代表監督へと就任した出来事を加筆。


海外の書籍なので、翻訳の関係上、日本人にとってはやはり多少読みにくいと感じる部分は否めない。
この本はオシム自身が語るような彼の半生を綴る記述で、自身の栄光の軌跡と、戦争という個人では絶対に打開不可能な苦悩と無念さが伝わる真実の吐露が語られている。

選手の起用法や独特な練習方法。決して本心を語らず、オブラートで包み込み真意をはぐらかす言動。マスコミとの距離を置く斜に構えた対応。スポーツとしてのサッカーを誰よりも愛し、ビジネスとしてよりも人を尊重する姿勢。
それらは、偉大な選手から監督へと立場が変わり、所属チームで実績を残していく過程で築かれていったオシム哲学の現れであり、不運にも政治的な問題に翻弄され続けた、皮肉さを伴う自己防衛手段でもある。


チームに数々の栄光をもたらした手腕も当然ながら、何よりもオシムという人物の人間性が尊敬されているということが、サッカー界にとって貴重であり、その偉大な監督が日本代表監督として手腕を発揮してくれている現状は、とても信じられないような心地でもある。
故郷である欧州を飛び出し、遠い異国の地である日本を新たなチャレンジの場として選んだ、そんなオシム監督の日本に対する熱い思いも見られる本書は、普段のマスコミへの対応とは異なる、本心である真実の内面の言葉が綴られている。


イビチャ・オシムの真実/ゲラルト・エンツィガー , 他

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