我輩は建築家の猫である。
名前は一応ライカとでも呼んで貰おう。
我輩は何度か生まれ変わってはいるが、いつも建築家になるのだ。
と、、、何かこの物言いが傲岸不遜で失礼に感じるので、ここからは普段通りの口調に訂正しよう。

我々は建築家なので、常に”造形”について思索している。
”美”とは何か、”形”とは、”機能”とは。

我々は建築家なので、建築には多大な感心を持つが、我々以外の存在にはあまり興味がない。
日常の自然な景観を眺め歩くことで、我々の世界を構築する要素を備(つぶさ)に観察し、その価値を慎重に判断している。

変化する動きを感じ、隠されている美を探し出すのだ。
こう思ったのは、さて、、、何度目のことだっただろうか?


猫の建築家 A Cat of Architect.
この作品は、傑作ではないだろうか?
ハードカヴァー発売当時は高額ということもあり、あまり気にしていなかったが、森先生の数ある絵本、詩集などと比較しても抜群に素晴らしい印象を持った。

本書は、まず佐久間氏の絵がありきで、その絵を並べてストーリィを展開し文章を書いたそうで、詩的な猫の建築家の思索と、佐久間氏の絵と、英文の組み合わせが大人のイメージを強く与える絵本となっている。
それは、それぞれが別々の魅力を放ち、何度も繰り返し読ませる形でもあるので、複数の楽しみ方が読者側に与えられる形式。

森先生の詩は、常に哲学的でもあり、真実の追究をシンプルに行っている。佐久間氏の画風は、極力無駄を削ぎ落とし、シャープでいてクールなレトロ感ある漫画的描写で、個人的にかなり好きな部類に入る。
森先生の作品を常に購入しているような人も、絵本である本作にはあまり目を向けないのかも知れないが、むしろ森作品が好きな人こそ、この作品を読んでおくべきだと強く感じた。

『遠くを見据えるように、じっと考える。目を細め、背中を丸めて、考える』


猫の建築家 (光文社文庫)/森 博嗣

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