集英社インターナショナル(2006/12)刊 「オシムが語る」。

欧州オーストリアリーグで監督を努めていた当時の本で、スポーツジャーナリストとの対談というインタビュー形式でオシムの内面の言葉が語られた一冊。


その内容は”人間オシム”という言葉が相応しく、オシム自身の政治・人生・サッカー観という体であり、サッカーの戦術や技術的な内容というよりも、むしろオシムの思想・哲学を知る為の本となる。

欧州では比較的タブーとされる宗教・政治など、かなり深い部分にまで踏み込んだ考えが披露され、偉大な監督として成功を収めた人物の、人間としての貫禄ある佇まいを形成する考え方や思想は、如何にして根本的に生まれ育まれてきたのか、ということに主眼が置かれている。


オシムは生来リアリストでもありペシミスト(常に最悪のことを想定しておく悲観主義者)であると公言する。また、無神論者でもある、と表明する。
それは多民族が入り乱れた複雑な国に生を受け、政治や宗教が根深く関わる中でサッカーを選手として監督として携わり、責務を全うしなければならない難しさを強く感じた結果であり、また、戦争という悲劇を身近に体験しているからこそ至った考え方なのかも知れない。
しかし、それ以上にオシムという人物は、地位も名声も手に入れた身でありながら、自身の信念は曲げずに権力には決して屈せず、常に人を偏見なく中立的に尊び大切にする。更に、自国のことを誰よりも想っているからこそ、多くの人々に尊敬され、また親しまれている。


この本は、当然、海外での話が主なので決して読みやすくはない。サッカーの本としてではなく、オシムの人間性を知る為の本として見做すべき一冊といえる。
巻末には、「オシムの言葉」著者の木村元彦氏との対談が短く収録されているが、本音としてはこの部分をもう少し読みたかったとも思う。もし出版社が刊行する機会があるとすれば、本書のように木村氏がインタビューし、オシムが日本について語る本を読んでみたいと感じた。


オシムが語る/シュテファン・シェンナッハ , 他

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#関連リンク→オシム本

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