2つ以上のものから1つを選ぶ場合は、選ばれる側には競争や話し合い(順番)があるのは、子ども達が遊ぶ砂場で学ぶことができます。しかし、1つしかないものから1つを選ぶのであれば、そこには競争も話し合いもなくそのまま選ばれる側の条件でいいわけです。

いま、建設業界の談合が大きな問題となっています。

ニュースだけ聞いていると、「談合」は悪、競争入札のない「随意契約」は悪、とマスコミ的にはなっています。

格差社会といわれるようになった日本社会は、今後、あらゆる業界で談合状態が広がっていくことが予想されます。

マーケット全体のパイが増えない、あるいは減少しているのに、奪い合いをする企業や業者の数はそのままでは、一方で過激な競争、一方では選べない状態が日常化してきます。

たとえば、野球界を震撼させた「西武球団の裏金問題」。野球がスポーツの一番人気で、巨人戦を全試合テレビ中継していた時代は、多くの野球少年が集まってきたでしょう。ファンも拡大の一途で大きなマーケットを形成していました。経営環境に敏感に反応する「就職」もそうです。『面接の達人』(中谷彰宏著)シリーズが誕生したバブル時代の人材マーケットを思い出してください。経営環境の変化は人の行き方、心のあり方まで変えてしまいます。

その一方で、豪雪地帯の除雪作業を行なう土建業者までも競争入札で選べという意見もあります。競争入札をすることで、その地域の職場を同時に失くすことになりかねません。その地域の地元の除雪を長年Aという地元業者がやっていたらAしかできないでしょう。BやCという東京や大阪の業者が仕事を取りにわざわざ来ますか。まず、来ないでしょう。

確かに、石炭から石油へエネルギーの転換があり、夕張市のような炭鉱の街が衰退して行ったようなことはこれからも起こります。そのときは、経営環境の変化に逆らうことはできないということを歴史が証明しています。

不特定多数を相手に商いを行なって来た新聞・放送・出版業界は、自らの談合体質を改善しなければ、2011年には、余命宣告を受けることになるでしょう。