当院の近所にとても評判のいい産婦人科があります。
男性の先生(多分それなりの年齢)がおひとりでされていて、忙しすぎてお産制限をされているとのことですが、そこへ行かれた方は、ほとんどの方が、異口同音に「良い先生だ」とおっしゃいます。

お産だけでなく、いろいろな婦人科疾患もとても良く診てくださいます。
またその診察内容を患者様の口伝えに聞くと、とてもよい説明をされています。

さてその先生のところへ行かれている患者さんが、ある日タイミングの指導を受けられました。

「先生、ゴールドサインが出たら夫婦生活を持てばいいのですよね?」

「それはそうだけど、そんな事よりも、回数を増やしたほうがいいよ。」

との事。

これは動物的にはすごく理にかなっています。

他の動物は、

1,生殖と妊娠の関係を理解しているとは限らない
2,さかりの時期には、ただ本能的に性交渉をもっている
3,基礎体温など測っているのはヒトだけ
4,狙って1回の性交渉で妊娠を目論んでいるのはヒトだけ
(他の動物は1回で命中しやすいのですが、何もそれを目論んでいるのではない)

他にもいろいろありますが、ヒトの生殖は他の動物とかなり異なる様相を持っています。

ところでヒトはどうして「さかりの時期」を失ってしまったのでしょう。

他の動物では排卵の時機をオスに知らせたり、オスが察知できる(ので「さかり」が起こる)のに、
ヒトではそれが不明瞭、不可能になってしまっています。

そのかわりに、ヒトはのべつくまなしに生殖活動ができるようになりました。
そこに神は「快感」というおまけをつけたのです。

逆に言えば、ヒトはさかりがないのですから、
回数をこなしてそのうち妊娠するようにできているのです。

犬だったか、さかりの時機の性交渉は70%の確率で妊娠します。

ヒトはせいぜい20代でも50%に至りません。

その代わり回数をこなすことにより、確率を上げるようにプログラムされています。

よく申し上げるのですが、昔々ヒトが「人」ではなく「ヒト」であった時代、
つまり動物の一種としてのヒトであった時代を想像してみてください。

コンビニはなく、テレビもなく、スマホなどもちろんなく、
夜にすることといえば、その行為以外特に何もなかったのではないでしょうか。

まずは、ヒトは人ではなく動物としてのヒトであるべきです。

なぜなら生殖システムは何百万年も前から変わっていないのですから。

こざかしい知恵を弄して、最小限の労力で妊娠しようと考えるのは、
実は動物としての「ヒト」の営みからどんどん離れていっているのです。

しかし、そういう本能と逆に、生殖活動に関するエネルギーが少なくてすむように、
そんなシステムを感じるような側面も持っています。

またその話も書ければいいなと思います。