ある日、女の子がこんな事を言いました。

「先生、わたし彼氏と別れてん。」

「へぇ、なんで?」

「だって、小さすぎて、しててもわからんもん。」

理由に驚きましたが、これは生殖活動的に理にかなっています。

「男性器は射精時に、できるだけ子宮口に近いほうが精子が生きたまま子宮に入りやすい。」
これは物理的にわかることです。

「膣の側壁には、男性器によって一定の圧がかかることによって、子宮の血流が上昇する。」
これはラットを使った研究で、膣にバルーンを入れて膣壁に圧をかけた時、一定の圧で子宮の血流量が増加していることが証明されています。

つまり女性自身は、実は「快感」という目安で生殖に効率的な男性を選別しているのではないかと思います。それ以外に、ヒトの性交渉には、理にかなった現象がいくつかあります。

男性は精液以外に粘液を分泌します。これは射精時に精子が尿道を通過しやすいように潤滑油の働きを担っていると思います。また女性の分泌物は、男性器の侵入により、膣壁が傷つかないようにこれも潤滑油の働きをします。

そして双方の潤滑油が膣内に満たされると、膣からそれが溢れ出ます。それは男性器に付着しているさまざまな雑菌や不純物を膣外に追いやる役目を持っています。男性器が何度も何度も膣内を前後に動くことにより、出口に向って様々な不純物が出ていきます。その際に、男性器の先端(亀頭)が若干膨らんでいるのは、それらを掻き出す役割があるとされています。

人工受精など、医療機関で採精されるとき、精液には不純物が沢山まじると言われています。時には微細な糸くずまで混じっている時があるとのことです。そういうものが子宮に入らないように、上記のような生殖形態は良い方向に働くと考えられます。

あまり知られていませんが、ゴリラはあれほど大きな体をしていますが、膨張時の男性生殖器はヒトより小さいと言われています。なぜ、ヒトは他の近縁種よりも体に比して男性器が大きいのでしょうか。

それは人類七百万年の歴史の中で、女性が求める男性器が適当な太さと長さに集約され、その遺伝子を持った男性が子孫を残す割合が大きくなり、現在の男性器の標準を形成したと思います。

冒頭に書いたような(男性には申し訳ないですが)、女性のモチベーションが上がらないような相手とは性交渉を持つ頻度が低下し、結果、挙児につながらない。換言、そういった男性が女性を妊娠させる率が相対的に低いと思われます。

しかし、ヒトの生殖としてはそうですが、現代の人として考えると、男性の魅力は多様化していて、人柄、所得、ルックス、知性様々なものさしで図られます。女性が考える男性の魅力と一致すれば、それは必ずしも生殖効率優先ではないと言えます。

以前、ガールズバーを経営する患者さんが来られた時に、このような事を言われていました。

「男性客を相手にする時には、適当に若くてかわいい女の子を揃えれば男は寄ってくる。しかし、ホストクラブなどで女性客を呼ぼうとすると、いろんなタイプの男性を用意せねばならず、それは女性の趣向が多様であることを示している」

と。

美女と野獣もうなずけるというものです。