新しい分野を切り開いたりして、それが当たると大きな利益を生む例は沢山ある。でも、既存の業界で突出して成長する会社は、よほど質が高いか、何か裏事情があるのではといつも思う。

 

 今回のビックリモーターの件もまさにその悪しき例となった。

 

 信頼をベースにした成長は極めて緩やかだが、大きな問題がない限り崩れることはない。しかし急な成長は、たいていどこかに大きな皺寄せが行っている。不自然な急成長の企業には要注意だ。

 

 先日、ある医師と懇談した。消費者が何かを選ぶ時に、本当に真偽を正しく見極める目を持たないといけない時代になった。金に魂を売るような商売の仕方が増えすぎて、しかもそういうところは宣伝力に物を言わせて、消費者の心を掴むのがうまい。

 

 当院のデータ、体外受精時の胚盤胞到達率の上昇は、医学系研究員の方に統計処理を依頼して有意差あり(つまり有効)というお墨付きをいただいたが、鍼灸などの物理療法、理学療法では、過去に例を見ない。しかしデータをウェブなどでは一切公開していない。何人もの医師から、きちんとした論文にしてはどうか、とか、もっと大きな学会で発表した方がいいとか言われるが、あえてそれをしないのは理由がある。

 

 ひとつめはパクられること。簡単にパクられる、本当に。何度も経験している。

 

 それから公表した途端に、おそらく「鍼灸は卵質改善に有効」という言葉が一人歩きして、中身がメチャクチャなものでも「鍼灸ならなんでも良い」的な宣伝をする輩が続出するに違いないから。現状はまさにその様相となっている。

 

 それを医師に伝えたところ、このように言われた。

 

 それを選ぶのも患者さんの自己責任。これだけオレオレ詐欺が横行しても、まだ騙される人がいる。闇バイトに手を染める若者も後を立たない。結局、騙される人をなくすことはできないんだよ。

 

 先日、お越しになった患者さんは、前に行っていた不妊鍼灸は「ちゃらくて商売っ気の匂いがプンプンした」と言われていた。ひとつの物を購入する時に、いろんなメーカーや機種を比較したりするはずだが、どうか後悔のないようにと願うばかり。