J side
可愛らしい見た目に反して、殺風景な姉ちゃんの部屋の中。
「・・・で、翔くんとまた次ねって約束して
さっき帰ってきたって訳。」
「はいはい、はいはい、ふーん、なるほどね。」
俺と翔くんの出会いから今日までを質問されるまま答え終えると
「はい、整いました。」
姉ちゃんは、難題な事件でも解決したかのように得意満面に言った。
「整うって?」
ソファに腰掛ける姉ちゃんと
ラグの上で体育座りする俺の絵図は
この姉弟の覆しようのない力関係を現しているよなって、姉ちゃんを見上げながら思った。
「潤は櫻井君を好きだし、櫻井君も潤の事
好きだと思うわよ、姉ちゃんは。
あんた達、両想いで付き合う手前の一番楽しい時期なのよ。手繋いでポケットに入れるとか、目が綺麗とか・・・こっちは社畜の如く残業して、誰とも手を繋がず、綺麗とも言われず、寒いから競歩気味に独りで帰ってきたっての。
イチャイチャしてんじゃないわよ、腹立つわね。」
整うの意味を聞いただけなのに
見解と結論に自分の行動まで述べるに飽き足らず、文句も付けられる。
姉ちゃん
・・・もしかして物凄く有能な人なのか?
仕事出来そうだもんな。
さすが、俺の姉ちゃん!
・・・
・・・って、
違う!気にするのはそこじゃなくて
「両想いって・・・、しょ、翔くんが俺を・・・好きって事?」
「そりゃそうでしょ。好きでもないのに男同士で手繋ぐ?相当な冷え症だとしても、無いでしょ。それ以外のやり取りだって友情の域超えちゃってるわよ。」
「そうだよな・・・」
手繋いできたのには
俺もちょっと、面食らった。
「あんたも櫻井君、好きなんでしょ?」
「・・・うん、まぁね。そうみたい。」
姉ちゃんに言われてから
心の中のモヤがかかっていた気持ちの正体を
知ってしまった。
翔くんの笑った顔が好き
ずっと隣に居たい
彼女なんて出来なくても
俺が居るよ
こんな気持ち、他の友達になんて
持った事なくて。
友達なんだから、そんな訳あるはずないって
見ないようにしていた感情が
やっと見つけてくれたねって
心の中に溢れてきて
翔くんに俺、恋してる。
「さっきは確かに姉ちゃんも驚いたけど、男同士だから反対するとか、今どきそんなの流行んないし、いいんじゃない?私は応援するわよ。」
翔くんへの想いを認めた途端
胸がキューっとしてきて
久しぶりのこの感覚を実感している俺を
困惑していると勘違いしたのか
励ましてから
「潤も大概だけど、櫻井君は更に相当鈍そうだから、するならあんたから告白した方がいいわよ。じゃないといつまでも今のままの友人関係でいる可能性が高いわ。」
独り寂しく競歩で帰ってきた姉ちゃんは、
まるで恋愛マスター気取りでアドバイスを付け加えた。
「お、俺からっすか?!」
告白しろなんて思いもしなかった指令に声が上擦り、舎弟みたいな言い方になってしまった。
「そうよ。そんな動揺しなくたって・・・今までは自分から言った事ないの?」
「そりゃ、俺からだってあるけど・・・」
「じゃあ大丈夫でしょ。頑張んなさいよ。」
俺から攻めた事あるにはあるけど
大半は向こうからだし
俺から言う時は
"この子可愛いな、付き合うか"
って、軽いノリが多かったし
付き合ってくうちに好きになる事はあったけど
最初から好きで告白するのは初めてで
しかも翔くんとは友達だし・・・多分、もう物凄く好きだと思うし
とにかく今回は今までとは違う。
何か違うんだって!
「もしかしたら櫻井君は、そこまで鈍い訳じゃなくて、あんたからの告白待ってるかもしれないしね。」
「何で?」
「自分の事どう思ってるのか自信ないとか?
告白して、友人関係すら崩れるのが怖いとか?」
「そんなの、俺だって一緒じゃん!」
「あんたは今日自分の気持ちに気付いた程度でしょ?そんな人相手じゃ不安になるわよ。」
「翔くんだって俺を好きかどうかわかんねぇしゃん。」
「櫻井君は言動に出てるじゃない。潤を好きだって。だからもっと自信持っていいわよ。女の、いや姉ちゃんの勘を信じなさい。」
遊ばれてるような、面白がられてるような気はしなくも無いけど
こういう時の姉ちゃんは、凄く頼り甲斐があって
「・・・うん、わかった。ありがとう。」
言われるまま、信じてみたくなる。
「じゃ、姉ちゃんお風呂入って寝るから。
あんたもとっとと自分の部屋帰ってね。解散!」
甘酸っぱいような余韻に浸る隙すら与えず
とっとと現実に切り替え、俺を追い出す姉ちゃんだけど
「うっす、おやすみ。」
結構好きだったりする事
この姉弟関係を実は気に入っている事は
姉ちゃんに絶対言わねぇ。
※更新遅いのに、またお話が長引いてる・・・。
そして、お話の系統がズレてきているw
次から軌道修正します!