日刊大衆 を転載します。

4月1日、日本老年医学会は、高齢者への使用の中止を医師が考慮すべき薬、約50種類を挙げた一覧を作成した。(省略)このリストは、10年ぶりに改訂予定の『高齢者の安全な薬物療法ガイドライン2015』の中に盛り込まれる」(医療ジャーナリスト)

高齢者に限らず、病気にかかった患者ならば、医者から処方された薬に対して疑問を抱かずに飲むのが普通だろう。だが、その薬が、副作用の大きいものや、効果がないものだったら――。

「記憶に新しいところでは、今年2月に、副作用の報告義務違反で行政処分が下ったノバルティスファーマ社の降圧剤バルサルタンがあります。非常に有名で売り上げナンバーワンの薬でしたが、実は、脳卒中や狭心症のリスクを下げる効果がなかった」

3月に『薬が人を殺している~知っておきたい有害作用と解毒のすすめ』(竹書房)という著書を出したばかりの、上野にあるTokyo DD Clinicの院長の内海聡医師は、こう警告する。

「薬は基本的に"毒"なんです。なぜなら、病気そのものや、その原因を治す原因療法とは違い、症状を個々に軽減、消失させようとする対症療法のためのものだからです。根治(根本から直す)ではなく、今出ている症状を無理やり抑えるだけならば、"毒"になるのは当然です」
(省略)

■強力さゆえに思わぬ副作用も
まずは、シーズン真っ盛り(?)の花粉症の代表的な薬「セレスタミン」から。「他の分野の薬の売り上げが軒並み落ちている中で、一番伸びているのがこのアレルギー薬です」(内海院長)

内海院長によれば花粉には体に悪い微量物質がいろいろ付いているので、それを鼻水で洗い流そうとするアレルギー反応が起きるのは自然なことだという。

「ですが、このセレスタミンには、アレルギーに関わるヒスタミンの作用を抑える抗ヒスタミンと、それよりももっと強い作用のステロイドが混合で入っているので、効きやすい分、副作用も大きい」セレスタミンは、血管を強力に収縮させて、花粉症特有の鼻詰まりも取り除いてくれるが、体全体の血管まで収縮させることから、脳出血や心不全、心筋梗塞を引き起こすこともあるという。

花粉症でなくとも、かぜで鼻水が止まらない人も要注意。解熱、頭痛緩和などに処方される非ステロイド系消炎鎮痛薬の一種である「ボルタレン」がそれだ。
「花粉症同様、熱が出るのも、体内の白血球などがかぜのウイルスを撃退しようとしている自然な反応です。熱を下げれば、かえって長引き、別の病気を誘発します。解熱に加え鎮痛効果も非常に強く、リウマチ患者の関節痛など、整形外科でもよく使われます。ロキソニンやボンタールなども同じです」(内海院長)

ボルタレン服用時は、その強力さゆえ、胃潰瘍などにならないように胃薬を一緒に飲むのが必須だ。もし怠れば、非常にまれなケースだが、胃腸出血、肝臓病、心不全や心筋梗塞まで起こすこともあるという。

次はインフルエンザ。鼻水、のどの痛み、咳などの症状を伴う呼吸器の急性炎症であるかぜと異なり、インフルエンザウイルスに感染することによって起こる。その治療薬である「オセルタミビル」――スイスのロシュ社により販売されている「タミフル」の商品名ならばピンとくる方も多いだろう。

「発熱が約1日半早く治まります。しかし発症後3日以上たってから使っても効果はありません。またインフルエンザが重症化して肺炎で入院する人の割合は、この薬を飲んだ人と飲まなかった人で違いはありません。それでいて、子どもの異常行動に加え、胃腸障害や睡眠障害などの副作用も明らかになっている」(岡田博士)

さらに岡田博士は、胃酸の分泌を抑える際に処方される胃腸薬「プロトンポンプ阻害薬」についても警告する。「"胃、十二指腸潰瘍の特効薬"とも言われますが、1年以上飲み続けると骨粗鬆症(こつそしょうしょう)になり骨折する割合が高まるというデータが出ています。プロトンポンプに限らず、すべての胃腸薬に言えることですが、飲み続けていると、徐々に胃が怠けてしまい、本来の自らが働く力を失ってしまうので、漫然と飲み続けてはいけません」

■自殺未遂を誘発するクスリも
代表的な抗うつ薬「パキシル」も、お薦めしない。
「精神薬は、覚醒剤やコカインなどに比べると依存症や副作用が"比較的まし"程度の"麻薬"であり、効果自体怪しく、逆に脳を破壊していきます。なかでもパキシルは、飲む人と飲まない人で、自殺リスクは何倍も違うことがわかっています。私は何人も自殺未遂経験のある服用者にお会いしましたが、誰もが"ルンルン気分で飛び降りた"と言っています」

内海院長がこう言えば、岡田博士はパキシルについて、こう述べる。
「海外では、特に青少年の自殺未遂が多発し、裁判が次々と起こされています」

不眠症では、精神薬の一種である「ベンゾジアゼピン」が挙げられる。
一般的に2~4週間までの治療には有効だが、それを超えると、自殺衝動に加え、攻撃性、てんかん発作などの反応を示し、認知機能にさまざまな悪影響を及ぼすこともある。

「最近、精神薬のCMをよく見かけます。そのせいか、早期に薬を飲んだほうがいいと思っている人が多いようですが、ストレスの原因を取り除くなどしなければ薬漬けになる可能性があります。安易な使用は避けるべきです」(岡田博士)

脳に働きかけるということで認知症薬「ドネペジル」も触れておかねばならない。「脳神経の信号をスムーズに伝えたり、ブレーキをかける作用があるとされていますが、これには"落とし穴"があります。

実は、この薬が認可を得るために調査した期間は半年までだったのです。3年をかけた別の大規模調査では、症状が改善されたり、進行を遅らせたりする効果がまったく消えていたんですから、効果は怪しいものです」