「作物がよく育つ肥沃な土地とは?」という疑問がある一方で、そもそも自然の土はどのようにできてきたのか、という疑問もある。
農業に使う土地とは結局、開墾したり水を引いたりと、生産力を高めるために人間が自然の土を加工したもの。この過程で自然の摂理を外していたら、循環は保てない。
事実、人類が農耕を始めて以降、土地の生産力はじわじわと下がっているという報告もある。リンク

●自然の土はどうやってできたのか?
地球誕生期、地球は熱くどろどろに溶けたマグマの塊だった。それが長い時間をかけて冷えたものが岩石。岩石は太陽の光や熱を受け、風や雨によって細かく砕けて砂になる。粘り気のある性質にかわって粘土になったものもある。

やがて地球に植物の祖先が生まれる。植物は枯れて腐ると、溶けずに残って養分になる。細かな砂に、この養分が少しずつ蓄えられ、土になった。植物が生まれた4億年くらい前から、少しずつ土はつくられて地球は今のような土に覆われる大地になった。
つまり、岩石が養分を含んだ土になるには、植物の働きが欠かせない。

●では、植物の祖先はどうやって生まれてきたのか?
植物が成長するためには「光合成」が不可欠だが、その機能を支えるのがマグネシウム。この元素は長い間岩石の中に閉じ込められていたが、自然外圧で岩が砕け砂や泥になる過程で漏れ出し、植物が利用できるようになっていった。

以下、「どろの誕生が引き起こした生命の開花」リンクより引用。
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約46億年前,誕生して間もない地球の表面は,岩石が溶けたマグマの海でわれていました。それから数億年後,地球の温度が下がると,マグマは冷え固まり,大気中の水蒸気が雨となって降り注いで海をつくったのです。

長い間続いた大雨の時代はやがて陸を削り,岩石をぼろぼろにしながら土や泥をつくっていきます。このできごとは,生命にとって大きな意味がありました。なぜなら,それまで岩石の中に閉じ込められていた,マグネシウムなどの生き物にとって微量でも必要不可欠な元素が海へ溶け出し,生命活動に利用できるようになったからです。

現在の地球の生物圏はマグネシウムによって支えられているといっても過言ではありません。すべての生き物のエネルギーのもとは,食物連鎖の出発点である植物にたどりつきます。

植物は,太陽の光を浴びて光合成を行うことで,ブドウ糖などの栄養をつくり出します。光合成は,「クロロフィルa」という緑色色素が太陽光をキャッチすることから始まりますが,じつは,このクロロフィルaがうまく働くためにはマグネシウムの存在が必要不可欠です。言いえれば,もし地球上からマグネシウムがなくなったら,植物は栄養をつくることができなくなり,結果としてすべての生き物の食物連鎖が止まってしまうのです。さらに,生き物が食事をした後に,食べたものを体内で利用できるエネルギーに変換する過程でもマグネシウムが活躍しています。

このように,マグネシウムは生命の根源的な反応で重要な役割を担っています。もともとは地球の岩石の中に閉じ込められていたマグネシウム。泥がつくられていくなかで,それは生物が広く利用できる物質となり,地球の生命が一気に花開いていったのです。(文・上野 裕子)


<参考>
・土と植物のふしぎリンク