謎の生物を倒したクリス達はクラストからウィルテナへ向かっていた。
エドワードへはマリエル大陸を二分するかのように連なる山脈を抜けなければならない。
最短距離で山脈を抜けるにはウィルテナの山道を抜けなければならいのだ。
クラストでの謎の生物のことが気にかかったが、後は協会に任せる事にした。
そしてウィルテナの宿でいつものように宿で夕食をとっていたときの事である。
「はぁ~」
「らぁ珍しいわねぇレイナが食欲無いなんて」
「エリナっ!!私だってそういうときもあるわよ!!」
「レイナひょっとして…あの日?」
ぼくの一言にレイナとエリナの拳が飛んでくる。
「じょっ…冗談だってば…」
ちょっと後悔…ぼくはこういうキャラじゃないんだよね…
いつもは食べるレイナがこのところあまり食べないのである。
「レイナ体の具合でも悪いのかい?」
「いやぁ…あのさぁ…あの時の事件がちょっと気になってねぇ」
「もう忘れなさいよ。後は冒険者協会と魔導士協会が解決してくれるわ」
「そうですね。ぼくも気になりますがこれ以上は…。それに魔導士がキメラを研究し暴走するのは良くある話です。」
「そうなの?」
ぼくの一言にちょっと驚くレイナ。
「ええそうよ。その度に魔導士協会が動いて犯人はきっついお仕置きを受けるのよ。」
「へぇ~そうなんだぁ。なんか悩んでそんしちゃったぁ。」
そういうとレイナはいつものように夕食を食べ始める。
「まったく…レイナったら」
それを見てあきれるエリナ。
その日は何事もなく早めに睡眠をとった。
しかし、それは嵐の前の静けさ…
ぼくらは翌日妙な噂を耳にしてしまう。
「っで?クリスぅどうするの?」
「どうするといわれても…あくまで噂ですし、それに冒険者協会が…」
町の人々の話によると、どうやら有力な商人が魔導士を抱え込んでキメラの研究をしているらしい…
冒険者協会が動いているしぼくらとしては何もすることが無いのが実際のところです。
「レイナったら何度も言ってるじゃない!私たちは何もすることがないのよ」
「でもぉ何かしっくりいかないのよ!とりあえずその商人のところへ行ってみようよぉ」
まるでおもちゃをねだる子供のように駄々をこねるレイナ。
「しょうがないです。とりあえず行ってみるだけ行ってみましょうか?」
噂を無視できないレイナに引っ張られてぼくらは仕方なくその商人の屋敷に行くことになる。
しかし、実際噂の商人を捜すのは大変である。
わかっていることは『商人』と言うことだけで名前も住んでいる屋敷の場所もわからない。
町中を探し回っり、聞き込みをし、ようやく商人の屋敷へ到着した頃にはすっかり暗くなってしまった。
「ふぅ何とか見つかりましたね…」
「さぁ突入しよう!」
疲れ切っているエリナをよそに気合い十分のレイナ。
「でもレイナ!まだここの商人が犯人と決まったわけでは無いんだよ?
突入はできないよ!何とかその商人に会ってまずは話を聞いてみなくちゃ」
「問題はそれですね。何か良い口実は無いでしょうか?」
「口実ねぇ…ただ会わせろぉってのはダメなの?」
「レイナ…かなり権力のある商人が旅の冒険者を簡単に屋敷へ入れると思う?」
「やっぱり…ダメだよねぇ…」
しばらくその場でぼくらは考え込んだ…
「とりあえずぼくに任せてください。ちょっと試してみましょう。」
結局良い考えが浮かばないままぼくらは面会を試みた。
「我々は冒険者協会の名を受け冒険をしている者です。商人ゲイル様にお会いしてお話を伺いたいのですが…」
「しばしお待ちください。」
ぼくらを屋敷の門の前に残し、門番の一人が屋敷の中へと入っていく。
それからだいぶ時間が経つ…
そして、レイナが我慢に耐えかね突入しそうになった頃ようやく中から門番が戻ってきた。
「お待たせしました。さぁ中へ…」
とりあえず冒険者協会ってのを強調したのが効いたみたいです。
実際は直接協会から派遣されたわけではないのですが、まぁ間接的には本当の事です…
冒険者協会は個々の国よりもかなり大きい権力を持っています。冒険者協会は世界を監視して平和を守る機関でもあるんです。
それだけに協会の名を受けてやってきたとなると普通は屋敷へ入れるでしょうね。