三章 4 | 猫耳さくらのメモ帳

猫耳さくらのメモ帳

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文章力も画力もあまりありません。過度な期待はしないでください。

二人と別れたぼくは城の書庫へ行くことにした。


ここで調べたかった事があるんだ。


昼間でも薄暗くカビ臭い室内には所狭しと書物が並べられている。


昔ここで読んだ記憶のある文献が正しければ過去から現在、未来までをも記録している魔導書「ルーンバイブル」がこの近くにあるらしいんです。


たった数日間でこの書物の山からお目当ての文献を見つけだすのは非常に困難です。


しかし、二人も必死にがんばっているのにここで弱音を吐くわけにもいかないのです。


棚から幾つかの本を取っては読む…この作業の繰り返していく。


かなりの数の文献を読んだはずなのですがいっこうにお目当ての情報が見つからない。


こうしている間にも時間は過ぎ、既に日も落ちかけて書庫もだいぶ暗くなってきた。


元々くらい部屋だけに余計に暗く感じる。





「ふぅ…ずいぶんと暗くなってきたなぁ


ランプをつけなくちゃ。こう暗くては作業にならないし天延」


薄暗くなった室内を見渡ランプを探す。


「ランプランプっと…うぁっ!!」


ランプを探すのに集中するあまり足下に積んでいた本の束に足をつまずいてしまう。


「あいたたっ…あーやってしまいましたよ!ついてないなぁ…早く片づけないと…」


足下に散らばったたくさんの本を一つずつ拾っていく。


「はぁ本当についてないなぁ……ん?」


拾い上げた本の中に一冊他の本とは違う何かを感じたんです。


しかし辺りは暗くとてもどんな本なのかは判別できません。


「ランプランプっと、どこ置いたんだっけ?…おっ!あったあった!」


ランプに火を入れ机において置いた先程の本を手にする。


本はかなり古いようでほこりまみれでどんな本なのかは判別不可能でした。


「んーとりあえず読んでみないとわからないか…」


ほこりをぱんぱんっと払ってからページを開いた。


黄色く変色したページには失われた都市の文字『古代語』が並んでいました。


「古代語かぁこれはちょっと期待できるかな?」





どれくらいの時間が経ったのだろうか。


ぼくは黙々とその本を読み続けていた。


驚いたことに偶然見つけた本には、現在伝説とされている古代の魔導書について書かれていました。


しかし目的の情報はなかなか見つからないのです。


必死に文字を指で追いながら読んでいった。


「……ん!?」


文字を追っていた指を止めた。


読みやすいようにランプを本に近づけて指が止まった場所を良く見る。


「これこれ!んーなるほど…意外と近いなぁ。でも結構曖昧な書き方ですね~困った…」


どうやらこの本は当時の魔法百科事典かなにかのようで、こんなのがあるらしい…っという書き方が多いのです。


当時としても信憑性に欠ける本のようです。


「本当かどうかわからないですが、行ってみるしかないんでしょうね…よしっ!!」


ぱんっと本を閉じると部屋中に誇りが舞いせき込みそうになった。


ランプを手に取ると席を立ち部屋を出た。


闇に包まれる室内…





「クリス様お気をつけて!」


翌日ぼくはルーンバイブルがあると思われる場所へ行くことにした。


「ありがとうございます。大丈夫ですよ!すぐに戻りますから…その間二人をお願いします。」


目的の場所は山と森に囲まれた村リーン。


そこからアーク山脈に登ることになるのですが、この山脈には数多くの伝説や言い伝えが残されているんです。


それらの伝説と昨日の本…これらから得られた情報をよるとルーンバイブルはアーク山脈にある、もしくはその手がかりがあるかもしれない。


たとえアーク山脈にあったとしても山脈はとてつもなく大きいんです。


メルファ大陸の大半を占める山脈ですからルーンバイブルを探し出すのはまず無理でしょう。


しかしここで諦めるわけにもいかないんです。





ついそんな事を考えてしまうのですが、行ってみなければなにもわからないのも事実です。


リーンの村は決して近いとは言えない距離ですが何とか昼までには着きたい。


目的地までは飛行魔法で移動することにした。


これなら馬を使うより速いし目的地まで最短距離で行けるんです。


本当は目立つのでやりたくなかったのでが今回はそんなわがままを言ってられるほど余裕が無いので…





城を出発してからかなりの時間と魔力を消費した頃である。


目の前に見えていた山が徐々にその姿を大きくしていき森の中にぽつりと村が見えてくる。


「おっ!見えた!」


徐々に高度を落とし村までまだ距離のある森の中で着地する。


このまま行ってしまっては村の方々を脅かしてしまうかもしれませんからね!





「すいませ~んこの辺りに残る伝説に詳しい方ご存じありませんか?」


村に入って一番最初に出会った村人に声をかけた。


「おーそれだったら村長さんの家に行くといい。案内しようか?」


「お願いします。お忙しいところ申し訳ないです。」


「どーせ暇してたところだ気にするな。」


ぼくは村人の後をついて歩き出した。


森に囲まれた村だけあって落ち着きのある雰囲気、これから迫る危機が嘘のようです。


「なぁおまえさんは冒険者なのかい?」


しばらくの沈黙の後村人が口を開いた。


「ええそうです。この辺りの伝説の調査に来ました。」


「そうかいおらぁお城の方じゃないかと思ったんだが…なんか雰囲気が違ったもんでな」


「はははは…気のせいですよ。ぼくはそんなすごい身分ではありませんよ」


痛いところをつかれぼくは冷や汗がでてしまいました…


「おー着いたぞ。ここが村長さんの家だ。村長さん!!村長さん!!」


村人が大声で呼ぶと中から村長らしき老人が出てきた。


「なんじゃ騒々しい…」


「すいません村長さん…こちらの冒険者さんが山の伝説について話を聞きたいと…」


「あっクリスと申します。この辺りに伝えられている伝説について調査に来たのですが、もしよろしければお話を聞かせていただけないでしょうか?」


丸太を組み上げてできた大きな家から出てきた村長さん、白髪で短く髭を生やし穏やかそうな表情が印象的だった。


「それはそれはこんな森の中までわざわざご苦労様です。爺の昔話でよろしければ…ささ立ち話もなんです中へ」


「ありがとうございます。」


ぼくは深くお辞儀をして家へ入った。


「その昔この辺には竜王さまがおったそうじゃ…竜王さまは神と魔族との戦いをなんとか止めようと試みたそうじゃ。しかしいくら竜王様といえど止めることはできなかったのじゃ」


ぼくは村長さんの前に座ったまま話に集中する。


村長さんは席を立つと部屋の書棚から一冊の本を取りだした。


「これじゃ…これがその時の出来事を記録したと言われる文献じゃ。一般的に語り継がれている伝説によると未来を司る女神によって神と魔族の戦いが終結したとされているのじゃが、この文献によると女神は直接は介入していないのじゃ。


竜王に力を貸し両者の接触を断ち、平和が二度と乱されないように監視するようお願いしたそうじゃ。


その貸したとされる力が…えーなんといったかのぉ…うーんほらあのなんたらバイブルって…」


「ルーンバイブル?」


「そうじゃそれじゃ!そのルーンバイブルとなって残されたとされているのじゃ」


村長さんはそういって手にしていた本を開く


「じゃがそれ以上のことは…何しろなにが書いてあるかさっぱりわからんのじゃよ」


「拝見してもよろしいですか?」


村長さんは頷くと本をぼくに手渡してくれる


「…その女神は竜王に力を託した…時が来るまでっということですね。


この森から山を登った所に竜王を祭ったものとかありませんか?」


ぼくは本のページをめくり書かれている文字を読み村長に尋ねた。


村長は驚きながらも冷静さを失わぬよう深く息をして答えた。


「読めるのか…やはりおまえさんはただの冒険者ではないようじゃな…


村から登って山頂付近に洞窟のような穴がある。竜王の巣と言われている場所じゃ」


何かを察した村長は立ち上がると窓から外を眺める。


ぼくは無言で村長の後ろ姿を眺めている。


「無用なことは聞かぬ…わしにとっては冒険者さんじゃよ。」


外を眺めたままそういって黙り込む。


「…ありがとうございます。それではぼくはこれで失礼します。」


席を立ち深々と頭を下げるてぼくは村長さんの家を後にした。