10月2日(月)より放送がスタートするNHK連続テレビ小説『わろてんか』は、明治後期から昭和初めの大阪を舞台に、主人公・藤岡てん(葵わかな)が小さな寄席経営を夫婦ではじめ、日本で初めて「笑い」をビジネスにした女性と言われるまでになる姿を描いた物語。

 

本作で、見事オーディションを勝ち抜き、ヒロインの藤岡てん役に選ばれたのが女優の葵わかな。誰もが夢に見る"朝ドラ"ヒロインの座を19歳という若さで手にした彼女が、てんを演じて感じたこと、現場のチームワークの良さ、そして『わろてんか』が目指すゴールについて話してくれた。

 

 

■てんちゃんのことは「見習わなきゃ!」

 

ーー撮影が始まって3ヶ月が経ちましたが、ヒロイン・藤岡てんをここまで演じてきていかがですか?

 

葵:最初のころは、「てんちゃんだったら、こういうときはこう考えるだろうけど、私だったらこう考えるな」という感じで、自分とてんちゃんをまったく別物と捉えて演じていました。だけど最近は、自分とてんちゃんの気持ちが混ざってきていて、逆に切り離して考えるのが難しいくらい。常に、一体化している気がしています。

 

(c)NHK

 

ーーどのようなときに、ご自身とてんの気持ちが混ざっているなと感じたのでしょう?

 

葵:子供ができるシーンで、どういう気持ちだろう…?と考えたときに「あ、自分とてんちゃんってこんなにミックスしていたんだ!」と、初めて気づきました。てんちゃんが年を重ねるにつれて、結婚したり、子供ができたり…と、私自身も経験していないことがたくさんでてくるのですが、てんちゃんと”はじめて”を経験することで、私も一緒に大人になっていくというか。てんちゃんと一緒に成長しているんだなと感じています。

 

 

ーー葵さんは、てんの魅力とは何だと思いますか?

 

葵:”誰かを思って笑える強さ”だと思います。てんちゃんは、辛いことがあっても前向きでいよう、笑顔でいようとする子。しかも、ただ明るいだけではなく、ちゃんと考えがあって、そのうえに明るさや笑顔があるんです。てんちゃんの常にポジティブでいる姿勢は、見習わなきゃいけないなと思いながら演じています。

 

 

ーー「見習わなきゃいけない」ということは、葵さんご自身は…?

 

葵:私はどちらかというと、ネガティブなほう(笑)。台本を読んだときから、てんちゃんは自分とはかけ離れているタイプの子だなと…。

 

 

ーーそうだったのですね(笑)。そんな自分とは違ったタイプの役柄を演じる上で、とくに意識していることはありますか?

 

葵:監督から「とにかく表情を変えて欲しい」と言われたので、そこはとくに意識しています。笑い方1つでも、顔全体を使って笑うのか、体全体を使って笑うのか、年を重ねたからこその笑い方なのか…いろいろな笑い方があるので、日々、試行錯誤中です。

 

 

■助けられた、夫・松坂桃李のことば

 

(c)NHK

 

ーーこれまでの撮影の中で、一番大変だったことを教えてください。

 

葵:やっぱり、私自身も経験していないことを演じるのは難しいです。もちろん他の作品でも、経験していないことをお芝居する場面はあると思うのですが、”朝ドラ”の場合は、放送される期間が長い分、ひとつひとつのできごとが細かく描かれる。例えば、子供のおしめを交換するところだったり、子供をあやすところだったり…細かいところは、経験していないと粗が出てしまうのかなと思っていて…。

 

 

ーー確かに。1シーン、1シーン丁寧に描かれるからこそ気が抜けないというか。

 

葵:そういう部分も含めて「10ヶ月の間に大人にならなきゃいけない」ということに、すごく頭を悩ませていた時期があったんです。そんなときに、松坂さん(松坂桃李)が「てんと藤吉の話でもあるから、なんでも相談してね。僕も相談するから」と言ってくださって。

 

 

ーーそれは非常に心強いですね。

 

葵:すごく嬉しかったですし、そこから監督やスタッフさんに、自分の思っていることを伝えることができるようになりました。

 

 

ーー実際にご自身の思いを周りの方に伝えてみて、いかがでしたか?

 

葵:「こういうふうにしたいんですけど、どうですか?」と伝えると、周りの方もすごく大きな心で受け止めてくださるんですよね。結果的にはっきりとした答えが出たのかというと、まだまだ分からない部分もたくさんあるのですが、意思の共有ができたということが、私にとって大きな一歩でした。

 

 

ーー意思の共有ができたことで、よりみんなで1つの作品を作っていることを実感できたのではないでしょうか?

 

葵:はい。最近は、とくに「みんなで作っているんだ」ということを実感しています。じゃぁ、私はチームのみなさんに何ができるのか?と考えると、「てんちゃんのように笑顔でいること」なのかな、とも思っていて。みんなが疲れているときでも、私が笑顔でいることで、周りに良い影響を与えられるようになりたいなと思っています。

 

 

 

ーーお話を聞いていると、本当に葵さんとてんちゃんが一体化してきているんだなということが感じられます。

 

葵:ありがとうございます。そうなれたのは、本当に周りの方々や環境のおかげだと思います。私、今まででは考えられないほど、現場で笑っているんです。

 

 

ーー現場では、どんなことで笑っているのですか?

 

葵:うーん、毎日笑いすぎているので、どれをお話するか迷います…(笑)。藤井さん(藤井隆)や、濱田さん(濱田岳)のアドリブで笑わせていただくことも多いですし、松坂さんが情熱大陸のようなナレーションをされているのを見て笑ったりも…(笑)。

 

 

ーーどのようにナレーションされるのか気になります(笑)。

 

葵:照明部さんのスタッフさんを見ながら「彼は、光を追い続ける」とか(笑)。それが本当にぴったりなんです!松坂さんのナレーションがあると、スタッフさんがお仕事をしている姿がさらにかっこよくみえる!

 

 

ーー素敵な現場ですね。

 

葵:はい。スタッフさんも、キャストもみなさん仲が良い現場です。1日1笑い、大笑いは毎日更新していると思います。

 

 

■ゴールを考えると「すごく寂しい…」

 

 

ーー葵さんは、本作が初めての”朝ドラ”への出演ということですが、改めて、”朝ドラ”の現場というのはいかがでしょう?

 

葵:自分に足りないことにすぐに気づけるというのが、”朝ドラ”ならではだな、と感じました。普通のドラマだったら、3ヶ月というと、もう撮影が終わっているけど、”朝ドラ”の場合はここからが始まりといっても過言ではないくらい。毎日、「ここはうまくできなかったな」「もっとこうしたらいいのかな」という気づきがあって、挑戦して、また気づいて、挑戦して…というのを繰り返しています。そんなふうに過ごしていたら、3ヶ月が本当にあっという間に終わってしまって…。残りの6ヶ月も、すぐに終わっちゃうんじゃないかな(笑)。

 

 

ーー6ヶ月後は、どんなゴールを目指したいと思いますか?

 

葵:いまは、チャンスがあるなら、もう1度ヒロインを演じさせていただきたい!と思えるほど、現場が楽しいんです。なので、この気持ちを持ち続けたまま、ゴールを迎えられたらいいなと思います。

 

 

ーー素敵ですね。でも、それだけ楽しい現場だと撮影を終えたときは、ものすごく寂しくなりそうな…。

 

葵:すっごく寂しいんだろうなと思います。まだ3ヶ月しかたってないけど、いま想像してもすごく寂しいので…。みなさんと悔いがないように、力を合わせて最後まで頑張りたいです。

 

 

ーー最後に、放送を楽しみにしている視聴者の方々へのメッセージをお願いします。 

 

葵:慌ただしい朝の時間にもさらりと見られるけど、どこかクスッと笑えるような、視聴者の皆さんの毎日の生活になじむようなドラマになるとうれしいです。ぜひ、楽しみに待っていてください。

 

Photography=Mayuko Yamaguchi
Interview=Ameba

 

 

■『わろてんか』公式サイト