人気ミステリー作家・米澤穂信のベストセラー〈古典部〉シリーズの幕開けとなった小説を実写映画化した『氷菓』は、「やらなくてもいいことなら、やらない。やらなければいけないことなら手短に。」をモットーとする"省エネ主義"の折木奉太郎(山﨑賢人)が好奇心MAXお嬢様の千反田える(広瀬アリス)にひっぱられ、日常に潜む謎を次々と解き明かしていく物語。

 

本作で、奉太郎の友人・福部里志役を演じているのが俳優の岡山天音。山﨑とはプライベートでも親友だという岡山が、久しぶりの山﨑との共演について、現場で感じたこと、そして自身が演じた里志への思いを語ってくれた。

 

 

■里志の魅力は、「実は人間味があるところ」

 

ーーまずは、本作の脚本を読んだときの感想から教えてください。

 

岡山:原作の小説も読ませていただいていたのですが、それぞれのキャラクターが達観していながらキャラが濃い。難しいなという印象でした。セリフでの掛け合いが多く、その中でミステリーの真相が見えてくるので、どうやって演じたらより良い形になるんだろう…と頭を悩ませました。

 

 

ーー全6作品が刊行され、累計230万部のベストセラー小説の実写映画化ということで、役作りも難しかったと思うのですが、里志を演じる上でどのようなことを意識しましたか?

 

岡山:原作の〈古典部〉シリーズを読み進めていくと、「あのとき、里志はこんなことを考えていたんだ!」ということが、たくさん出てくるんです。話が進むにつれて里志が抱えているものが明らかになっていき、里志のキャラクターがより立体的に見えてきて。そこは映画ではあまり描かれてはいない部分ではあるのですが、里志という人間の奥行きを捉えた上で演じようと心がけました。

 

©2017「氷菓」製作委員会

 

ーー里志の奥行きというのは、具体的にどのようなところで表現されたのですか?

 

岡山:奉太郎と摩耶花と3人でえるの家から帰るシーンで、里志の本音をちょっとだけ覗いてもいいのかな、と思いながら演じました。でも基本的には、あまり気にしないでいましたね。人の全貌というのは、そう簡単に見えないと思うので、『氷菓』の中ではあくまでもニコニコした里志で居ようと。

 

 

ーーなるほど。岡山さんは、里志の魅力はどこにあると思いますか?

 

岡山:人間味があるところです。いつもニコニコしていて、要領も良くて、人当たりも良くて、悩みなんて全然ないように見えるんですけど、実は奉太郎に大きなコンプレックスを抱えていて。それがめちゃくちゃ切ないんです。

 

 

ーー普段ニコニコしている里志だからこそ、余計切なく感じますね。

 

岡山:そうなんです!平気な顔をしている人こそ、それがひっくり返ったときの威力というのがすごいというか。里志のような気持ちは僕も身に覚えがあったので、放っておけなくなりました。

 

 

ーー他に、里志に共感できる部分や似ている部分はありましたか?

 

岡山:ないですね。僕は要領も悪いですし、不器用ですし、人当たりも良くないですし…(笑)。

 

 

ーーいやいや、そんなことないですよ!少なくとも、今お話していて人当たりが良くないとは思えません(笑)。

 

岡山:いやいや…(笑)。里志は、僕よりも処世術に長けた人間です。賢い人間だなぁと思いました。

 

 

 

■親友・山﨑賢人は「自然と人を好きになれる人」

 

ーー里志の親友・折木奉太郎役の山﨑さんとは、プライベートでもかなり仲が良いのですよね。

 

岡山:はい。実は今回の出演も賢人から聞いたんです。電話で「今度、一緒にやる作品が決まったよ!」って言われて。

 

©2017「氷菓」製作委員会

 

ーーそうだったのですね。それを聞いたときは、やっぱり嬉しかった?

 

岡山:もう、めちゃくちゃ嬉しかったですね。賢人とは10代のときからずっと仲良くしていたので。電話を切ったあとも大きな声を出して喜んじゃいました(笑)。

 

 

ーー実際に撮影に入ってみて、いかがでしたか?

 

岡山:楽しかったです。でも、やっぱり賢人とお芝居をするのは、少し恥ずかしいとうか…笑っちゃいました(笑)。前にも共演したことはあるんですけど、そのときから何年もあいていましたし。

 

 

ーー照れくさい部分がありますよね。

 

岡山:衣装合わせに行って、賢人が通りかかったときに目が合ったんです。でも、お互いどんな顔をして会えばいいのか分からなくて、しばらく見つめあったあと、賢人にプイッと目を逸らされて(笑)。

 

 

ーー(笑)。

 

岡山:そのあと本読みをやったときも、「お、おぅ…!」みたいな。前日もプライベートで一緒にいて、普通に話してたのに(笑)。なんていうか…不思議な感覚でしたね。

 

 

ーーそもそも、お二人がそこまで仲良くなったきっかけというのは何だったのでしょう?

 

岡山:賢人と初めて会ったのはオーディション会場の待合室でした。僕が賢人のことを「どこかで見たことあるな~」と思ってじ~っと見ていたら、賢人はガンを飛ばされていると勘違いしたようで、僕のことを睨んできて。僕もイラッとして睨み返して…って、それが最初の出会いでした(笑)。

 

 

ーー第一印象は、お互いあまり良くなかったのですね(笑)。

 

岡山:2回目に会ったのは、また別のオーディション会場で。二人一組でやるオーディションだったんですけど、殴るシーンで本当に賢人にあたってしまったんです。終わってから「すみませんでした」と謝りに行ったら、「こないだ会いましたよね?オーディションの結果、きました?」って賢人が話しかけてくれて。でも、そのときも意気投合したわけではなく顔見知りくらい。仲良くなるとは全然思っていませんでしたね(笑)。

 

 

ーーそして、映画『Another』(2012年)で共演することに?

 

岡山:そうですね。『Another』は泊まりでの撮影が多かったので一緒にいる時間が長かったんです。そのうち徐々に賢人が僕に懐きだして(笑)、どうやらノリが合うことが分かって、東京に帰ってきてからも遊ぶようになりました。そこから今日まで、時間が合えばしょっちゅう一緒にいます(笑)。

 

 

ーー約5年ぶりの共演ということになりますが、久しぶりに共演してみていかがでしたか?

 

岡山:純粋に凄いなって思いました。賢人はこんなに凄いところで戦ってるのか、と。なのに、根っこが全く変わらないんです。人気が出たからといって人を斜めに見たり、突っぱねるようなことをしない。良い意味でなにも変わらない。それに、スタッフさん、キャストのみなさん…全ての人のことを自然と好きになれる人なんです。だから、より現場の信頼関係が築けるというか。そういうところは僕も見ていていいなと思いましたし、やっぱり好きだなと思いました。

 

 

ーーでは、岡山さんも刺激を受けた部分も?

 

岡山:刺激というより、自分とは全く違う人だなという印象のほうが強いかもしれません。自分と近いものがあると嫉妬したりすることもあると思うんですけど、賢人とは現場へのアプローチの仕方が全く違う。だから、変なライバル意識とかが生まれてこないですね。

 

 

ーー普段は、同世代の役者さんの活躍をみて燃えることもあるのですか?

 

岡山:現場ではみんなで良いものを作ろう、というスタンスを大事にしていますけど、嫉妬心は強いほうだと思います。家でテレビで人の活躍を見ていると、悶々としちゃうときも(笑)。僕も頑張らなきゃいけないなって気持ちになりますね。

 

Photography=Mayuko Yamaguchi
Interview=Ameba

 

 

【作品情報】

 

 

<STORY>
「わたし、気になります!」奉太郎の安穏な高校生活が彼女の一言で一変した。
「やらなくてもいいことなら、やらない。やらなければいけないことなら手短に」をモットーとする“省エネ主義”の高校一年生、折木奉太郎(山﨑賢人)。神山高校でも安穏とした灰色の高校生活を送るつもりだったが、姉の命で廃部寸前の古典部に入部することに。嫌々部室へと向かった奉太郎は、一身上の都合で古典部に入部してきた少女・千反田える(広瀬アリス)と出会う。一見清楚なお嬢さまといった印象の美少女だが、「わたし、気になります!」となると誰にも止められない、好奇心のかたまりのような少女だった。中学からの旧友、伊原摩耶花(小島藤子)と福部里志(岡山天音)も入部し、新生古典部が発足した。えるの好奇心に巻き込まれるうちに、学園で起こる不思議な謎を次々と解き明かしていく奉太郎。そんな奉太郎の推理力を見込んだえるは、彼にある依頼をする。「10 年前に失踪した伯父がえるに残した言葉を思い出させてほしい」― それは 33 年前に学園で起きたある事件へとつながっていたのだった。彼らは、33 年前に発行された古典部文集「氷菓」と歴史ある学園祭に秘められた真実を解き明かすべく、歴史の中に埋没し、伏せられてきた謎に挑んでいく。

 

キャスト:

山﨑賢人 広瀬アリス 

小島藤子 岡山天音

天野菜月 眞島秀和 貫地谷しほり(特別出演)

本郷奏多/⻫藤由貴

 

原作:米澤穂信「氷菓」(角川文庫刊)

 

監督・脚本:安里麻里

 

製作:「氷菓」製作委員会

制作プロダクション:角川大映スタジオ

配給:KADOKAWA

 

 

映画『氷菓』は11月3日(金)より全国ロードショー。