1月12日(金)より公開中の映画『伊藤くんA to E』は、モンスター級の【痛男】こと伊藤誠二郎(岡田将生)と崖っぷちアラサー【毒女】の矢崎莉桜(木村文乃)を中心に巻き起こる震撼恋愛ミステリー。

 

本作で、自意識過剰・無神経・童貞・28歳フリーターでありながら、女性たちを翻弄する"伊藤くん"を演じているのが俳優の岡田将生。前代未聞の【痛男】を怪演した岡田に、廣木隆一監督との7年ぶりの共演について、そして伊藤というキャラクターへの思いを聞いてきた。

 

 

■10代のころには気づかなかった、恋愛作品の本当の魅力

 

ーー本作で岡田さんは、廣木隆一監督と7年ぶりの共演となりますが、本作の主演が決まったときの気持ちからお聞かせください。

 

岡田:廣木監督とは7年前に『雷桜』でご一緒させてもらっていて、あの苦しい現場に入るのか…という、恐怖と楽しみが入り混じった気持ちがありました。でも、(7年経って経験を積み)昔とは違う表現ができると思いましたし、伊藤はどんなふうに演じようかと楽しみながら演じられるキャラクターだと思いました。

 

©「伊藤くん A to E」製作委員会

 

ーー恐怖と楽しみが入り混じった気持ちということは、緊張などもあったのでしょうか?

 

岡田:すごく緊張しました。プライベートではちょこちょこお会いしたり、前回の舞台にも観に来てくださったときにお話していたんですけど……。

 

 

ーー仕事の現場で会うのはまた違う、と。

 

岡田:全然違います。仕事の現場では監督も顔つきがかわるので。初日はとくにガチガチになっていたみたいで、「緊張しすぎだよ」と言われました(笑)。

 

 

ーーそんなに緊張されていたのですね(笑)。久しぶりの廣木組ということで、「成長したね」と言った声もかけられたのではないでしょうか。

 

岡田:みんなでご飯に行ったときに、昔は騒いでいたのがスンと座っているようになっただけで「大人になったなぁ~」と(笑)。廣木組のみなさんは親心というか、「岡田、がんばれ!」という目線で見てくださるので、とても居心地が良い。だからこそ、自分が持っているものは全部出さなきゃなとも思えました。

 

©「伊藤くん A to E」製作委員会

 

ーー再タッグを組むまでの間、廣木監督の作品はご覧になられていましたか?

 

岡田:観ていました。『火花』(Netflix)も観ましたし。廣木監督って昔は攻めている映画のイメージが強かったんですけど、最近はキラキラした恋愛映画もたくさん撮られていて。たまに「キラキラした映画ばっかりやって~」とからかうと、「いいんだよっ!」って(笑)。そんな関係性ですね(笑)。

 

 

ーー仲良しですね(笑)。岡田さんは、恋愛ものの作品は久しぶりな気もしますが。

 

岡田:10代のころはたくさん恋愛ものを演じさせていただいて、でも、そこから抜けたかったんでしょうね。20代になってからは違うことをしていきたいというのがあって、いろいろな役を演じさせていただきました。でも、もう1回転すると、恋愛ものっていろいろな要素が入っていて面白いんだなということに気づき…。そういうこともあり、今回は本当に楽しんで撮影できました。『伊藤くん〜』はまた特殊で、恋愛映画といえるものなのかどうかもわからないですけど(笑)。

 

 

■伊藤の可愛いポイントは衣装にもあり?

 

ーー"伊藤くん"こと超モンスター級【痛男】伊藤誠二郎というキャラクターについては、監督と事前にどんな話をしましたか?

 

岡田:伊藤をどう見せるのか、ということに関しては最終的な見え方があって、伊藤自身も芝居をしているわけなので、それをどの辺まで見せるのか……というのは現場で話しながら計算して役を作っていきました。

 

©「伊藤くん A to E」製作委員会

 

ーー演じるうえで、特に意識したことは?

 

岡田:これ以上やると、あまりにも嫌なやつになってしまうなというところと、とことん嫌なところと、その線引きを決めていました。廣木監督からも「もっとやってみようか」「ちょっとやりすぎだな」とアドバイスをもらいながら、探りながら。

 

 

ーー例えば、どのようなところで線引きをしていたのでしょう?

 

岡田:C(相田聡子/池田エライザ)に関してはとことん「コイツムカつくな~」と思われるように、B(野瀬修子/志田未来)とのシーンでは、ストーカーだから子供らしさを出そうとしたり。嫌なやつと、ちょっと憎めない部分のバランスは考えて演じていました。

 

©「伊藤くん A to E」製作委員会

 

ーー伊藤のファッションは、ドット柄のシャツやカラフルな衣装などが多く、そこも憎めなさに繋がっているのかなと感じたのですが…。

 

岡田:そう、そうなんです。衣装さんとも話したのですが、衣装によって伊藤の憎めなさを演出している部分もあります。可愛い服で、ボタンを一番上まで閉めて着ることで、伊藤の嫌な奴さを和らげているというか(笑)。

 

 

ーーなるほど。ちなみに、岡田さんは私服でこういった服は着られますか?

 

岡田:着ないです。普段はモノトーンばっかりなので。僕にとって珍しい服装ばかりなので、そこも注目してもらえたら嬉しいです。

 

 

■伊藤は、「一番好きになったキャラクター」

 

ーー共演の女優のみなさんからは、「伊藤は岡田さんのハマり役」という声が多かったと伺ったのですが、改めて伊藤の魅力はどういうところでしょうか。

 

岡田:自分の世界を持っていて、自分のテリトリーで生きている人間だということです。誰にも迷惑をかけていない、伊藤は伊藤として人生をまっとうして生きている。……というように、演じていると肯定したくなる気持ちがあって、今は伊藤の何が痛男なんだろうって、分からなくなってきています(笑)。近くに伊藤のような人がいたら関わりたくない、近寄りたくはない、けれど2017年の夏を通して、一番好きになったキャラクターであることは間違いないです。

 

 

ーー伊藤を演じたことによって、私生活で影響された部分などはありましたか?

 

岡田:影響されています。まず、考え方が変わりました。伊藤のように思っていることをはっきり言うことは、人を傷つけてしまうことに直結するかもしれないですけど、すごく大切なことで。海外の方はわりとはっきりと物を言う方も多い。言いたいことを言えないのは日本人特有なのかな、と。そう思うようになってからは、ストッパーがないことは、素敵なことなんだなと考えられるようになりました。僕自身は、ストッパーがたくさんあるので(笑)。

 

 

ー伊藤くんを見習って、ご自身のストッパー外してみようと試みたりは…?

 

岡田:思いましたけど、なかなか実行できない(笑)。友人に思ったことを言ってみようとチャレンジはしてみたんです。でも、嫌な顔をされたので、すぐに「ごめんね」と謝りました…(笑)。

 

 

ーー人を傷つけずに言いたいことを言う、というのは非常に難しいことですね…。

 

岡田:難しいですよね。マイペースというか、ある意味、自己中心的な人って羨ましいです。大人になるにつれて自分の世界を持っている、ブレないことが素敵だなと思うようになってきたので。

 

 

■『伊藤くん〜』を観て、「ガールズトークをしてほしい!」

 

ーーA〜Eの個性的な女性キャラクターにも注目ですが、岡田さんがとくに苦手な女性はいますか?

 

岡田:やっぱりCの聡子だと思います。怖いなと思います。自分がそれをされたら嫌だし、友人の立場だとしても嫌です。友達としてはA(島原智美/佐々木希)のように都合のいい女性になっている子がいたら、「大丈夫か?」って心配になっちゃいます(笑)。「目を覚ませ!」って言ってあげたいですね。

 

©「伊藤くん A to E」製作委員会

 

ーー(笑)。女同士で観にいったらガールズトークに花が咲きそうですよね。

 

岡田:ぜひ、ガールズトークしてほしいです。女性の中でも、伊藤くん、クズケン(中村倫也)、田村さん(田中圭)のどの男性が嫌か、意見が分かれるみたいで。木村文乃さんに聞いたら、クズケンが一番嫌だって言っていました(笑)。

 

 

ーー確かに、男女問わずいろいろな意見が飛び交いそうです…。

 

岡田:あとは、僕もいろいろな取材を通して気づいたのですが、男性のインタビュアーさんと、女性のインタビュアーさんだと質問の内容がぜんぜん違うんです。それも面白いな、と。見方がそれぞれあって、みんな意見が違うのかなと思うと、たくさんの方に観ていただきたいなと思いますね。

 

Photography=Mayuko Yamaguchi
Interview=Ameba

 

 

<作品情報>

 

 

『伊藤くんA to E』は、絶賛公開中!

 

出演:岡田将生 木村文乃 / 佐々木希 志田未来 池田エライザ 夏帆 / 田口トモロヲ・中村倫也 田中 圭

 

監督:廣木隆一  

 

原作:柚木麻子「伊藤くん A to E」(幻冬舎文庫) 

 

脚本:青塚美穂 音楽:遠藤浩二

 

主題歌:androp「Joker」 (image world) 

 

配給:ショウゲート 

 

 

<STORY>

 

伊藤(あいつ)にさえ、出会わなければ―

落ち目の脚本家・矢崎莉桜は、“伊藤”という男について悩む【A】~【D】4人の女たちの切実な恋愛相談を、

新作脚本のネタにしようと企んでいる。心の中で毒づきながら「もっと無様に」なるよう巧みに女たちを誘導、

そんな莉桜の前に“伊藤”が現れる。

“伊藤”は莉桜が主宰するシナリオスクールの生徒。中身が無く、いつも口先だけの彼が、なぜか莉桜と

同じ4人の女たちについての脚本を書いていたのだ。しかもそこには、莉桜のネタにはない5人目【E】の女が存在し…

“伊藤”の狙いは一体何なのか―。莉桜は徐々に追い詰められていく。