やがて沿道の景色が変わり、建物が増えてきました。天理市の中心部に近づいてきたようです。多くの沿道の声援を受けながら、独特な建物が並ぶ中を走り、天理教本部へと向かいます。
けん310さんに追いついたのはどのあたりだったでしょうか。しばらく話しながら併走を続けていましたが、先に行ってくださいと言うけん310さんに先行することになりました。
やがてコースは天理教本部の中へと入りました。天理教本部の敷地内を曲がりながら走るこのコース。これまたすごいコースです。なんともいえない気が立ち込めていて、一種のパワースポットの中を走っているような感覚に包まれます。
天理参考館・教庁の建物の下をくぐると、間もなく折り返しが待っています。それが楽しみになってきます。
でもその前に、この建物を越えた左手にはぜんざいエイドが待っていました。
ここで足を止めて、ゆっくりとぜんざいを味わいます。
こうした名物エイドがあっても、タイムに終われているときはなかなかゆっくりとエイドを楽しむことができません。昨年のしまだ大井川マラソンの大エイドも、サブフォーギリギリだったため、おでんを食べてお茶で流し込んで、わずか20秒程度の滞在で通過しました。でも今回は、たまたまエイドの直前で一緒になったNO.71さんの旦那さんと話したりしながら、ゆっくりと過ごしました。
美味しいぜんざいでリフレッシュした私は、あらためて先を目指します。天理高校の前で折り返し、ふたたび来た道を戻ります。
ぜんざいを食べている間に抜かれたけん310さんに再び追いつき、記念写真を撮ります。そしてまた、けん310さんに先行していきました。
25km地点を2時間29分17秒で通過しましたが、さすがにぜんざいロスは大きく、24kmから25kmは8分27秒かかっています。それでもこの間の5kmを30分46秒で走っているのですから、ここまでは安定した走りができています。そして25km通過時点での体の余裕という点では、今年走った2つのフルと比べてずっと余裕があります。
天理教の神殿を左手に見ながら走り、まもなく天理教本部の敷地をあとにします。
ここからは来た道を引き返していきます。あの竹を叩いていた応援。そして清志郎。復路でもその姿を見ることはできるのでしょうか。
相変わらず、沿道からは大きな声援をもらえます。高校生くらいの男子の集団は、大きな声で「おがま~ん」と名前を呼んでくれます。私も彼らに負けじと大きな声で「ありがとう~」と応えて走ります。
沿道との距離が近く感じるせいでしょうか。ハイタッチを求める子どもたち(ときには大人も)の姿も数多くありました。そんな沿道の応援に力づけられながら、最大の難所を目指します。
上り勾配がきつくなり始め、歩き出す人が急に増えてきます。25kmを過ぎ、そろそろダメージを感じ始めるところです。そこにこのきつい勾配ですから、肉体だけではなく精神的にもつらいところです。私は今回はカメランをしているおかげで前半から抑えて走ってきましたから、まだ肉体的にも精神的にも余裕があります。
きつい上りを乗り越えて、ふたたび白川大橋を渡ります。往路で見た東側の風景とはまた違う西側の風景を楽しんで、先を目指します。
復路の29.3km地点、往路では19.7km地点になりますが、ここには関門が設けられています。19.7km関門の制限時間は、2時間54分。私が通過するときは、ちょうどその時刻に達したところでした。その関門を過ぎてからも、まだ何人かのランナーがやってきていました。
その関門を通過して間もなく、トイレがありました。序盤から感じていた尿意はまだありますが、切羽詰まった感じにはなっていません。でもこのトイレは待っている人もいないようです。ロスタイムも少なくて済みそうなので、ここに寄ることにしました。
ところが序盤からやや我慢をしてきたせいでしょうか。なかなかスッキリと出てくれません。おかげで思った以上に時間を要してしまいました。
トイレを出て屈伸をしてコースに戻ります。エイドでバナナとパンを補給して、間もなく30km関門を通過しました。通過タイムは3時間02分10秒。この間の5kmは32分53秒もかかってしまいました。でもここは上りだったことに加え、トイレロスもあります。29kmから30kmは8分27秒もかかっていますから、ロスタイムを除くとペースそのものは相変わらず安定しています。
ぜんざいロスやトイレロスもあり、平均するとキロ6分を超えるペースになっていますが、ここまでの感じは悪くありません。今年のフルマラソンで、30km地点をこれだけ楽に迎えられたのは初めてのことです。
コースは下りに入っています。足に大きなダメージを感じているときは、下りの方がつらく感じることもあります。しかし今日は大丈夫、問題はなさそうです。
30kmを過ぎてもこうしてしっかり走れることが、だんだん嬉しくなってきます。周りにはペースが落ちているランナーが増えてきていることもあり、自分のペースが上がっているような錯覚を起こします。私はすっかりランナーズハイの状態に達してしまいました。
そんな私の背中を押すように、竹を叩きながら、往路同様に力強く応援をしてくれます。
写真を撮り、大きな声でお礼を言って、またスピードに乗って坂道を駆け下ります。
思い起こせば初めての北海道マラソンのとき。当時の自己ベストは4時間17分だった私が、制限時間約4時間(当時の最終関門は40km地点を3時間45分)のレースを完走するためには、30kmまでは足をためて関門ギリギリで通過して、30km以降で勝負をかけるしかない、という作戦で走りました。このときは30km関門を過ぎてからGOサインを出し、そこからペースを上げることができたという、今思い出してもベストの内容といってもいいようなレースができました。
今日はそのときに近い感覚です。30kmからスパートをかけることが可能な感覚です。ランナーズハイも手伝って、私はペースを上げていきました。
32km地点を過ぎ、あのポイントが近づいてきます。はたして、彼はまだ応援してくれているのでしょうか・・・。(つづく)
Let's Run with a Smile!